2004年1月の映画

Index

  1. 暗くなるまで待って
  2. セイ・エニシング
  3. 三つ数えろ
  4. マジェスティック
  5. シカゴ
  6. お熱いのがお好き

暗くなるまで待って

デレンス・ヤング監督/オードリー・ヘプバーン/1967年/DVD

暗くなるまで待って [DVD]

 ムショ帰りの詐欺師コンビ、マイク(リチャード・クレンナ)とカーリノ(ジャック・ウェストン)が、謎の男ロート(アラン・アーキン)から、昔の仲間が見ず知らずのカメラマンに渡してしまったドラッグ入りの人形を取り戻すよう求められる、というのが話の発端。三人はカメラマンの留守宅に忍び込んで家中家捜しをするが、お目当ての人形は見つからない。困った一味はその男の妻スージー(オードリー・ヘプバーン)が盲目なのに目をつけ、人形の在りかを聞き出すために手の凝った芝居を仕掛け始める。
 DVDの昔っぽいパッケージ・デザインが気に入って衝動買いしてしまった作品。最初のうちは集中力を欠いていたため話がよくわからなくて、しかも始まってから20分も主役のヘプバーンが出てこなかったりするし、こりゃ失敗だったかなあと思ったりもした。ところが、いざヘプバーンが登場してからは、おもしろいのなんの。それほど期待していたわけではなかったから、思わぬ拾い物をした気分だった。
 とにかくシナリオが素晴らしい。主人公が盲目であるという設定を最大限まで利用しきっている。悪党たちが仕掛ける芝居が、彼女が目が見えない故に破綻してゆく過程のスリリングさはかなりのものだ。いくつもの伏線の張り方も見事で、人形の在りかがわかる場面や、スージーがマイクに騙されていたことを悟る場面など、あまりの上手さに思わず唸ってしまった。ラストの駄目押しにも結構マジで驚かされた。ヒッチコックばかりが上質のサスペンスを作っていたわけじゃないんだなあと感心させられた一作だった。こういう映画が何気なく存在しているのを見ちゃうと、もっともっと古い映画をたくさん見たくなる。
(Jan 08, 2004)

セイ・エニシング

キャメロン・クロウ監督/ジョン・キューザック、アイオン・スカイ/1999年/DVD

セイ・エニシング [DVD]

 これといってとりえのない青年ロイド(ジョン・キューザック)が卒業生総代を務める優等生のダイアン(アイオン・スカイ)に恋をした。彼は卒業式のあと、意を決して彼女をパーティに誘い出す。ダイアンは朝まで一緒にいても手も握ろうとさえしないロイドの内気な性格に惹かれ、二人はダイアンが留学のためイギリスへ立つ日までという限定つきでデートを重ねるようになる。日ごとに親しさを増してゆく二人は当然のようにやがて結ばれるものの、幸せな期間は長く続かなかった。父親が脱税容疑で逮捕されたことにショックを受けたダイアンは、父親の反対を押し切って続けてきたロイドとの関係に罪悪感を覚えて、彼に別れ話を……。
 ひとつ前に見た『暗くなるまで待って』とは正反対に、この映画にはかなり期待していた。「なにか言って」という思わせぶりなタイトルとすっきりとしたパッケージ・デザインが印象的で、以前からずっと前から気になっていた作品だったし、ネットで見るとAll Movie Guideでの評価が4つ星半だったりするし。基本的に僕はロマンティック・コメディは好きだから、これは絶対に気に入るに違いないと、見る前から勝手に思い込んでいた。だからすぐさまDVDを買ってしまったのだけれども。
 いやあ、始まった途端にその舞台設定にやばいなあと思ったんだ。いきなり80年代ムード全開。それも懐かしの女性ロックバンド、ハート(メンバーがキャメロン・クロウの奥さんなんだそうだ)あたりの、こてこてのアメリカン・ハード・ロックのテイストが映像から溢れ出ている。ファッションも音楽も当時そのまま。自分の恥かしい青春時代を彷彿させる舞台設定には赤面せずには見られないものがあった。ああ、こりゃいけねえと思った。
 とにかくロイドを始めとする若者たちの存在があまりにもリアルにぶざま。全然可愛くないハード・ロック少女たちとか、野郎ばかりでつるんでいる男たちとか。主人公のロイドもただいい人というだけで、これといった目的も持てずにぶらぶらしているばかりだし。自分の思春期の情けない思い出を合わせ鏡で見せられているようでやる瀬なかった。
 たぶん映画としてはいい作品なんだろう。でもとにかく僕はそうした風俗描写にやられてしまって、まったくと言っていいほど楽しめなかった。期待していただけに失望が大きかった。
(Jan 09, 2004)

三つ数えろ

ハワード・ホークス監督/ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール/1946年/DVD

三つ数えろ 特別版 [DVD]

 レイモンド・チャンドラーの処女長編『大いなる眠り』の映画化作品。驚いたことに脚本家の一人としてウィリアム・フォークナーのクレジットがある。ハードボイルド界の巨匠とアメリカ文学界の巨人のコラボレートだ。監督もどうやらすごい人みたいだし、なんだか錚々たるメンバーによって製作されたハードボイルド・ムービーの古典。
 私立探偵フィリップ・マーロウ(ハンフリー・ボガート)は、車椅子の老富豪から彼の次女カルメンを脅迫している古書商との交渉を任される。問題の男をつけてある屋敷へと乗り込んだマーロウだったけれど、そこで問題の男ガイガーの死体と、その傍らで泥酔するカルメンを発見する。彼が娘を自宅へと送り届け、現場へと取って返した時には死体は消えていた。代わりに富豪の運転手が死体となって波止場に上がる。翌朝、富豪の長女ヴィヴィアン(ローレン・バコール)が彼のオフィスへと現れ、カルメンの写真とともに新たな脅迫状が届いたと言う。
 マーロウの行く先々に死体が転がり、主人公はあっちこっちで殴られてばかりいる。時代性を考えると、この暴力描写の多さはやはり新機軸だったのだろう。でもまあ、全体的に説明不足な感が強い上に──それこそハードボイルドの文体の特徴だと言ってしまえばそれまでだけれど──、こちらの見る姿勢にも問題が多々あり──なんたって最初に見た時には酔っていたせいもあるけれど途中で寝てしまい、二度目はその続きから見たというていたらくだった──あまり楽しめなかった。いずれもう一度ちゃんと見直さないといけない。
(Jan 12, 2004)

マジェスティック

フランク・ダラボン監督/ジム・キャリー/2001年/DVD

マジェスティック 特別版 [DVD]

 時は50年代のアメリカ。ハリウッドの脚本家ピーター・アップルトン(ジム・キャリー)は、些細なことから共産主義者のレッテルを貼られて仕事を奪われ、ヤケ酒を食らった帰り道に事故を起こして車ごと河に転落してしまう。一命を取りとめて見知らぬ町の浜辺へと打ち上げられた彼は、事故の際に頭を強く打って記憶を失っていた。そんな彼を見つけたその町の住民たちは、誰もが一様に驚きの色を浮かべる。ピーターは戦死したはずの町一番の人気者、ルーク・トリンブルにそっくりだったのだ。ルークの父ハリー(マーティン・ランドー)や恋人のアデル(ローリー・ホールデン)を初めとした町中からの祝福に戸惑いながらも、ピーターは新しい人生を受け入れ、ハリーが経営していた映画館ザ・マジェスティックの再建に乗り出す。しかしすべてが軌道に乗った矢先に彼はひょんなことから記憶を取り戻してしまい……。
 本国ではあまり評判がよろしくないようだけれど(All Movie Guideでは2つ星)、僕は十分に楽しませてもらった。記憶をなくした主人公が赤の他人(しかも町の英雄)に間違われて、大歓迎を受けてしまうという寓話的設定は十分におもしろい。主人公がブギウギ・ピアノを弾けちゃうなんてふざけたくだりとか、能天気で感動的なラストシーンとか、とても好きだ。映像も綺麗だし、とてもいい映画だと思った。
 まあこの内容で2時間半はやや長過ぎる嫌いはあるし、展開は部分的にはとてもイージーだし、ケチをつけたくなるようなシーンがないでもないけれど、かといって絶対にけなされるような悪い映画じゃないと思う。たとえ甘過ぎる嫌いがあろうとも僕は積極的に好きだ。こういう映画を単純に楽しめないような人生はあまり送りたくない。
(Jan 12, 2004)

シカゴ

ロブ・マーシャル監督/レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギア/2002年/DVD

シカゴ スペシャルエディション [DVD]

 スターを夢見るロキシー・ハート(レニー・ゼルウィガー)は、業界にコネがあるという愛人の言葉が自分をたぶらかすための嘘をだったことを知って激昂し、相手を射殺してしまう。刑務所に入れられた彼女だったけれど、女性の弁護にかけては右に出るもののいないという弁護士ビリー・フリン(リチャード・ギア)の協力により、獄中にありながら見事マスコミの寵児となる。念願かなって手に入れたスターの座を手放すまいと、移り気な世間の関心を引き続けるために様々な策を弄しつつ、ついに判決の日を迎えたロキシーだったけれど……。
 昨年度のアカデミー賞で6部門を受賞した話題作。しかしながら、これがなんともへんてこりんな映画だった。キャラクターは俗物ぞろいでほとんど共感を呼ばないし、ストーリーも別にとりあげるほどのものじゃないだろう。正直なところ、観ていて気分がよくなるような映画だとは思わない。
 そんな映画がアカデミー賞を独占してしまった要因は、ただひたすらミュージカル・シーンの見事さに尽きるんじゃないだろうか。バラエティに富んだミュージカル・シーンのおもしろさが、このドラマの持つシニカルな俗物性を、笑いでくるんで賞味に耐えるものにしてくれている。ショービズの世界に翻弄される人間たちの愚かさをたっぷりのブラック・ユーモアで浮かび上がらせてみせた秀作という感じだった。
 個人的には女性二人よりもリチャード・ギアがよかった。歌は全然うまくないんだけれど、胡散臭い小悪党ぶりがその上手くない歌いっぷりと見事にマッチしている。特に最終弁論の場面でのタップダンスが好きだ。馬鹿らしすぎて、失笑がおさまらない。
 しかしこんな馬鹿な映画がアカデミー賞ってのは結構ゆかいだ。
(Jan 26, 2004)

お熱いのがお好き

ビリー・ワイルダー監督/マリリン・モンロー、トニー・カーティス、ジャック・レモン/1959年/DVD

お熱いのがお好き 特別編 [DVD]

 なりゆきでギャングの報復現場に居合わせてしまい、命を狙われるはめになった貧乏ミュージシャンのジョー(トニー・カーティス)とジェリー(ジャック・レモン)。困った彼らは逃亡と収入確保の一挙両得を狙い、女性に扮してメンバー募集中の女性楽団にまぎれ込む。そこで出会ったとびきりの美女シュガー(マリリン・モンロー)と“女性同士の”友情を育み始めた二人だったけれど、ジョーの方はそれだけではあきたらず、大富豪の御曹司のふりをしてシュガーに接近し始める……。
 この映画、全米映画協会が選ぶコメディ映画の第一位なのだだそうだけれど、僕はまったくなんの予備知識もなく観始めたので、いきなり酒の密売をするギャングと警察の、ささやかながら意外と迫力のあるカーチェイスで始まる冒頭から、主役の野郎二人が女装をして楽団に忍び込むという展開にいたるまで、なにこの映画って感じで、あっけにとられっぱなしだった。とにかく主役の男性二人が最後まで女装したままというのにはまいった。あまりに見栄えが悪くて気分的に落ち着かなくていけない。女装ものは苦手だったりする。
 ということでいささか辟易させられる映画ではあったけれど、それでも不気味な女装でやぶれかぶれ気味の怪演を見せるジャック・レモンには結構笑わせてもらった。それに、なによりもこの映画のマリリン・モンローはとびきりキュートだ。まさに輝かんばかりの魅力を放っている。
(Jan 28, 2004)