2023年11月のサッカー

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  1. 11/04   福岡2-1浦和 (ルヴァン杯・決勝)
  2. 11/11 △ 鹿島1-1柏 (J1・第32節)
  3. 11/24 ● 川崎3-0鹿島 (J1・第33節)

アビスパ福岡2-1浦和レッズ

JリーグYBCルヴァンカップ・決勝/2023年11月4日(土)/国立競技場/フジテレビ

 今年のルヴァンカップ決勝に駒を進めたのは福岡と浦和の両チーム。
 例年ならば勝敗予想はレッズのひとり勝ちになりそうなところだけれど、今年はちょっと違った。少なくても鹿島サポ目線だと違う。
 アントラーズのリーグ戦での対戦成績は両チームとも二試合ともスコアレス・ドロー。つまり両方とも守備力が高く、攻撃力はそれほどではないという印象。
 そんな両チームの対戦だ。福岡も初タイトルへ向けてモチベーションが高いだろうし、国立での試合ということで、浦和サポーターが多いことは予想に難くないけれど、浦和もそう簡単には勝たせてもらえないだろうと思った。
 とにかく大事なのは先制点――そう思いながら観始めたところ、開始わずか5分で試合が動いたらびっくり。
 福岡の紺野和也が右から入れたグラウンダーの高速クロスに、ゴール前へ絶妙なタイミングで切れ込んできた前寛之があわせた。唖然とするほど、すんごい見事な連携だった。
 福岡はさらに前半ロスタイムにも追加点。こちらもアシストは紺野で、CKの流れから右サイドにいた彼からのクロスを、ゴール前に上がっていたDFの宮大樹が左足でダイレクトに流し込んだ。こちらも絶妙。なにこの美麗な2ゴール。
 アビスパは前とか宮とか苗字が一文字の選手が二人もいるだけでも珍しいのに、その両者がゴールを決めるってのはもう激レアでしょう。あと鹿島戦には出ていなかった井手口がいたり。レッズは興梠がベンチ外。
 後半に入って福岡がPKを得るシーンがあって、これが決まっていたら勝負ありだったのだけれど、ここで山岸のPKを西川がファインセーブ。そのあと後半途中に途中出場の明本のゴールが決まって、レッズが1点差に追い上げたこともあり、最後まで緊迫したいい試合になった。でも結果は最後にカシマって逃げ切った福岡の初優勝~。
 いやしかし、元アントラーズの奈良、金森、小田がいるアビスパの優勝ってのがね。
 奈良がものすごく泣いていたけれど、今年で国内タイトル7年無冠の元王者・鹿島でレギュラーを奪えずに移籍していった彼らが、決して強豪とはいえない福岡でタイトルを獲得したというのがすごいよなって素直に思う。
(Nov. 05, 2023)

鹿島アントラーズ1-1柏レイソル

J1・第32節/2023年11月11日(土)/カシマサッカースタジアム/DAZN

 現時点での岩政の監督としての限界を感じずにはいられない一戦だった。
 降格争いの真っただ中にいるレイソルとの試合だから、相手のモチベーションが高かったのは間違いない。でも優勝するって息巻いていたクラブが17位のクラブに勝てないんじゃ仕方ないでしょうに……。
 この日もスタメンは早川、広瀬、植田、関川、安西、海舟、ピトゥカ、樋口、仲間、垣田、優磨というお馴染みの11人だった。
 このメンツで戦ったときが、今年もっとも結果が出ているのは間違いないのかもしれない。でもその形に固執してしまうところに僕は岩政の限界を感じる。
 だって垣田とかこれがスタメン19試合目で4ゴールだよ? 仲間も同じスタメン数で1ゴールのみ。で、樋口が3ゴール。
 鈴木優磨こそ13ゴールをあげているものの、攻撃的なポジションでレギュラーとしてもっとも多く起用されているその他3選手のゴールがあわせて8では、やっぱ優勝するには無理がある。
 僕は樋口や仲間は選手として好きだ。でも単純に点が取れてない現状を鑑みれば、このふたりを併用するフォーメーションがベストとは思えない。
 少なくても垣田より少ない出場時間で5ゴールをあげている知念よりも垣田を優先して使っている時点で納得がゆかない。それはベンチを温めている知念自身にしたって同様じゃなかろうか。土居聖真もしかり。なぜ今季2ゴールの生え抜きの彼より1ゴールの仲間優先なの?
 仲間はとても守備意識の高い選手だし、樋口はもともとボランチだから、このふたりを高い位置で起用すれば、そりゃ守備が安定するのは間違いないだろう。その点が彼らが優遇される理由だろうと思う。そもそも、樋口に関しては今年のチームの要だと思うので、使うなって話をしたいのではない。
 でも彼をボランチではなく一列前で起用すれば、それはもう否応なくチームとしての攻撃力は下がるのは致し方ないところなのではとも思う。
 樋口を攻撃的なポジションで使うのは、佐野海舟という優れたボランチが入ってきたからで、彼とピトゥカと樋口のうち、誰を外すかって問われたら僕だって困る。だからこの三人を併用するシステムを採用していることには文句はないのだけれど、でもそこに仲間と垣田を入れてしまう形はあまりに保守的に思える。ボランチ三枚を併用するならば、攻撃的なポジションはもっととんがった選手起用をして欲しい。
 トライ・アンド・エラーで失敗して結果が出ないのならば仕方ないと追うんだけれど、いまの岩政はトライもせずにエラーを繰り返している感がある。たまにトライをしたと思ったら、前半だけ観て結果が出ないからと諦めてしまったりするし。なんかもう勇気も辛抱強さもない感じが困りもの。
 この試合もそうだったけれど、岩政は前半だけ観て選手を替えてしまうことが多い。選手にとっては45分だけで見限られたんではたまったもんじゃないだろう。それでチームとして結果が出ればともかく、出ないことのほうが多いわけだし。
 この日も後半の頭から広瀬をさげて佐野を右SBにコンバートトしたけれど、この起用法も疑問。佐野の強みの対人の強さは、中盤の底においてこそ生きる。緊急事態ならばともかく、後半の頭からあたりまえのように彼をSBで起用するのはNGじゃん? ベンチにはプロパーなSBの須貝だっているのに、彼や広瀬を使うべきポジションにボランチの佐野を使うのは、彼らに対する愚弄に思えてしまう。
 対する柏の左SBにはジエゴというブラジル人がプレーしていて、再三高い位置まで上がっていたから、僕は最初のうち彼がDFだとは思っていなかった。あれこそ鹿島のSBに求められるプレーじゃなかろうか。岩政がSBになにを求めているのか、僕にはまったくわからない。
 いずれにせよ、勝てないわ、選手の使い方には納得がいかないわで、僕の岩政に対する評価は下がりまくりだ。長い目で成長を見守りたいと思っていたけれど、あまりのていたらくに、もうそろそろ辛抱たまらなくなってきた。終盤戦での追い上げこそが鹿島の伝統なのに(少なくても僕はそう思っている)、ここへきて5試合連続白星なしなんて、そんなの許されないんじゃんって思う。
 なんかもう愚痴ばっかりになってしまった。
 対する柏は序盤戦のつまずきでネルシーニョを解任、5月からはコーチだった井原が昇進して指揮を執っている。
 監督交替後も成績は悪いままだったけれど、8月にレッズから犬飼を獲得してから守備が安定して調子が上向いたという話で、犬飼が好きな僕としては、そんな彼のプレーが観られるこの試合を楽しみにしていた。
 ところが、だ。この試合では前半はホーム鹿島が押し込まれっぱなしで、まるで犬飼がテレビに映らない展開だった。なんなん、本当に。弱すぎだろ、アントラーズ。
 前半の終わりごろに関川が足を痛めて昌子と交替。後半は前述した広瀬→松村の交替に始まり、垣田→知念、仲間→聖真と替えても結果は出ないまま。
 そのうちミスからカウンターを浴びて、マテウス・サヴィオの見事なスルーパスから細谷にゴールを奪われて先制を許す。
 昌子、ひさびさに前半から出番をもらったのに、サヴィオに股を抜かれて失点を許したのは痛恨だった。イージーなパスミスからピンチを招くシーンもあったし、安定感がなくて残念だった。
 この失点のあと樋口→船橋とカードを切って交替枠を使い切り、そこまでのメンバー変更の成果かどうかは知らないけれど、後半は前半に比べるとずいぶんと攻撃が活性化していた。でもって、そんな押し込み気味のプレーのうちから、同点となるPKが生まれる。
 セットプレーからの競り合いで犬飼の腕にボールがあたって、VARの介入によりハンドの判定。これをピトゥカが決めて、試合はそのままドローで終わった。犬飼には気の毒な判定だったけれど、こちらとしては負けなくてよかった。
 レイソルはこの試合でイエローカードをもらったキャプテンの古賀太陽、存在感ありまくりだったジエゴ、ボランチの高峰の三人が累積警告で次節は出場停止とのこと。最下位の横浜FCとの勝ち点の差はわずか2だから、そりゃ厳しい。でもまぁ、次節はそんなレイソルと勝ち点で並んでいる16位の湘南と横浜FCとの直接対決があって、ライバル同士で勝ち点3を分け合う展開になるのは唯一の救いだろう。
 ヴィッセルはF・マリノスと勝ち点2の差で首位をキープ。J1も残り2節で、優勝争い、降格争いともに佳境になってきた。
(Nov. 12, 2023)

川崎フロンターレ3-0鹿島アントラーズ

J1・第33節/2023年11月24日(金)/等々力陸上競技場/DAZN

 今季J1のいちばんのサプライズは川崎の低迷だった。
 去年まで無双と呼ぶにふさわしい強さだった川崎が、まさか一度も優勝争いに絡むことなく一年を終えようとは……。
 だって前節までの成績が12勝12敗8分。勝率ジャスト5分だよ?
 あの川崎がそんなにも負けようとは夢にも思わなかった。
 今年も鹿島にとって天敵なのは変わらなかったので、なおさら信じがたい。なんでそんなに負けてる相手に今年もダブルを食らうかなぁ……。
 代表ウィークがあったため、二週間ぶりとなったこの試合。
 鹿島のスタメンは早川、須貝、植田、関川、安西、海舟、ピトゥカ、松村、仲間、知念、優磨という11人だった。
 古巣・川崎との対戦ということで知念のスタメン起用は予想通りだし、願ったり叶ったりだったけれども、あとのふたり、松村と須貝のスタメンは意外性があった。松村はかわりに樋口をはずしての起用だったから、なおさらだ。
 松村は五輪代表帰りということで、モチベーションの高さを買ってのことだったのかもしれないけれど、でも樋口のセットプレーは今年のストロング・ポイントだよ? 天敵相手にそれを使えなくしてどうする。
 須貝の起用は彼のコンディションが上がってきたからだと説明しているけれど、山梨で前半戦のほぼ全試合に出場している選手が、移籍後にコンディションを崩したとか、ちょっと考えにくいんだけれども。
 僕の目には単に岩政が広瀬と彼と、どちらを使うべきか決めかねているだけのようにしか映らない。
 結果として難敵相手にスタメンに起用された須貝はミスで2失点に絡んでしまった。二ヵ月近く出番を与えていなかった選手を、こんな難しい相手にいきなりぶつけるのはどうなんだ。連係不足やら試合勘不足で、最高のプレーができなくても仕方ないと思うんだけれど。なのでミスは残念だけれど責める気にはなれない。
 後半開始から関川をさげて昌子を入れた理由にしても、試合後のインタビューで質問を受けた岩政は、まともに答えられていないし、彼の采配や言動って、どうにも合理性を欠いている気がして仕方ない。大卒の理論家というイメージにもかかわらず、じつはこの人、すごく感覚的で、あまり頭がよくないんじゃないだろうか。
 実際にはどうなのかわからないけれど、そう思えてしまうのが残念だし、本人にとってももったいないよなぁと思う。
 対する川崎については、なぜ低迷しているのか不思議だったけれど、この試合でFWの選手たちのスタッツを見て、あぁなるほどと思った。
 故障などで出番が少なかったのかもしれないけれど、レアンドロ・ダミアン、マジーニョが1得点ずつ。小林悠も4点だし、チーム最多はFWではなく、MF脇坂の9点だ(この日のPK含む)。このゴール数ではさすがに優勝争いに加われなくても仕方ないかなって思った。
 でも、そんな川崎にこの日もアントラーズはこてんぱんにされてしまう。
 今季1ゴール(しかもPKのみ)というレアンドロ・ダミアンになぜに2ゴールも許すかなぁ……。それもあんなに見事に。
 前半の失点は右サイドの登里からマルシーニョへのパスを、須貝が足を投げ出して止めようとするも触れず。そのままフリーとなったマルシーニョが入れたクロスにレアンドロ・ダミアンがピンポイントであわせた。
 後半の2点目もファーからマルシーニョへのパスに、須貝が遅れてチェックにいって足を滑らせてすっころがり、ふたたびフリーでアシストを許してしまう。
 まぁ、すべって転んだのはアンラッキーだったけれど、須貝は身体が小さいのでプレーが軽くてフィジカル勝負に弱い印象なのは課題だろう。
 駄目押しの3失点目は早川が与えたPK。ペナルティ・エリアの外を向いていたレアンドロ・ダミアンをうしろから倒してしまったのがもったいなかった。
 でもまぁ、今年は早川のファイン・プレーに幾度となく助けられているので、いいプレーについてまったく取り上げてこなかったのに、ミスばかり責めるのも酷だ。まだ若いんだし、これも勉強になったろう。
 ということで、3失点はどれもミス絡み。試合自体の印象はスコアほどひどくなかったので、結果を分けた差はそんなに大きくないと思う。来年こそはマジで一矢報いてもらいたい。それにしてもこんなに川崎が低迷した年でも勝てないとは、本当に呪われているんじゃなかろうか。
 裏ではこの日の試合でF・マリノスが引き分け、翌日神戸が勝って、両チームの勝ち点の差が4に広がったことで、最終節を残してヴィッセル神戸の初優勝が決まった。大迫、おめでとう!
 残留争いでは湘南との直接に負けた横浜FCの降格がほぼ決定。17位の柏と勝ち点の差が3だから、最終節で並ぶ可能性はあるけれど、得失点差が12もあるのではいかんともしがたい。しかも最終節の対戦相手は鹿島だし……。
 神戸が吉田孝行監督のもとで優勝したのを見て、岩政にももう一年くらい猶予を与えて見守るのもありかもという気がしてきたけれど、彼の去就は最終節の結果いかんかもしれない。最下位の横浜FCにさえ勝てないようだと、小泉社長の堪忍袋の緒もそろそろ限界だろうから。
(Nov. 26, 2023)