2012年11月のサッカー

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  1. 11/03 ○ 清水1-2鹿島(延長0-1) (ナビスコ杯・決勝)
  2. 11/14 ○ オマーン1-2日本 (W杯・最終予選)
  3. 11/17 △ 鹿島3-3仙台 (J1・第32節)
  4. 11/24 ○ 名古屋1-2鹿島 (J1・第33節)

清水エスパルス1-2鹿島アントラーズ(延長0-1)

ヤマザキナビスコカップ・決勝/2012年11月3日(土)/国立競技場/フジテレビ

 鹿島アントラーズ、20年目のナビスコカップ決勝で清水エスパルスを延長戦のすえ破り、通算16冠目を獲得するの巻。
 うーむ。今年は泣かず飛ばずで終わるものと思っていたのに、こうやってタイトルを取ってしまうんだから、やはりサッカーはわからない。
 この日の鹿島はスタメンが意表をついていた。GK曽ヶ端、4バックが西、岩政、青木まではいいとして、左サイドバックがなんと昌子。そして中盤が本田拓也に小笠原、遠藤、柴崎、興梠、そして大迫のワントップという形。
 新井場はどうした、ドゥトラはどこだと思ったら、ふたりともベンチには入っていた(そしてともに後半に出てきた)。レナトがいないのは怪我のためだとして、あとのふたりは戦術的な交替だったわけだ。
 左サイドバックに関しては、なんでもひとつ前のリーグ戦──今年はセレッソといい、この日のエスパルスといい、J1とナビスコ杯で同じクラブとつづけて対戦するという、珍しい展開になっている──で大前にやられ過ぎたので、新井場よりも1対1に強い昌子でその大前(と右サイドバックの吉田豊という選手?)を止めに行くという作戦だったらしい。ジョルジーニョ、発想がやたらとディフェンシヴというか、熱血漢なイメージに反して、打つ手が手堅いというか。もしくは守備的なばくち打ちというか。
 ドゥトラの替わりに興梠スタメンの理由はよくわからないけれど、想像するに、延長戦を見越して120分戦うとした場合、途中出場であまり結果を残していない興梠をスタメンで使って、ドゥトラを後半から投入したほうが、最終的に相手に脅威を与えられるだろうという作戦だったのではないかと思う。
 なんにしろ、興梠の起用も本来のツートップではなく、最近流行{はやり}のワントップでのトップ下だったし、SBとして起用された昌子は当然まったく攻め上がらないしで、前半はただ耐え忍ぶだけって展開だった。それでもとりあえず、大前には仕事らしい仕事をさせなかったし、清水のチャンスも数えるほどだったので、作戦自体は成功だったんだろう。
 ということで、試合が動いたのは、後半の頭から興梠に替えてドゥトラが出てきてから(興梠の交替は前半にイエローカードをもらっていたのも理由だったらしい)。後半なかば過ぎにドゥトラのドリブル突破からのパスを受けた柴崎がディフェンス・ラインの裏へとぬけ出し、清水の右SB李記帝{イ・キジェ}に倒されてPKを獲得。これを柴崎本人が落ち着いて決めて、アントラーズが先制した。柴崎をPKのキッカーに指名したのはジョルジーニョだったらしいけれど、あの落ち着きぶりはポスト遠藤康仁にふさわしかった。
 この時点で残り時間は20分を切っていた。この日は守備も安定していたし、これで勝ったか!と思ったんだけれど、そのすぐあとに、こちらもセットプレーからのゴール前の競り合いで謎のPKを取られて、同点に追いつかれてしまう。
 ジョルジーニョは先制ゴールが決まるちょっと前に、本田拓也を増田に替えるという、この人にしては珍しい采配をふるっていた。で、このPKの場面、テレビのテロップではその増田にイエローが出たことになっていた。
 今年は不遇なシーズンを余儀なくされている増田にこういう晴れの場面で出番が回ってきたことを喜んでいたらば、そのすぐあとに失点に絡むなんて、あぁ、なんてついてないんだ……。というか、そもそもリプレイを見ても、彼のプレーのどこがファールかもわからなかったので、なおさら可哀想すぎる! と思ったのだけれど、あとで確認したら、その場面でカードを出されていたのは青木だった。なんだ、増田、冤罪じゃん。……って、そもそも青木のファールってのも、ぜんぜんわかんなかったし。この同点PKには疑問符がついた。
 でもまぁ、その同点ゴールがあったからこそ、延長戦での柴崎のビューティフルなゴールが生まれたわけだし、結果オーライ(今年はこの言葉ばかり使っている)。しかもそのゴールにつながるサイドチェンジのロング・バスを通して、決勝点の起点となったのが増田なのだから、なおさらオッケーだ。
 もうね、柴崎の決勝ゴール(延長前半3分)は、ほんとグレイト!だった。柴崎は先制点のPKをもらったシーンのリプレイを見るような形でふたたびゴール前へと攻め上がると、右サイドの西からのラスト・パスを受けて、ワンタッチ目でボールをDFラインの裏へと流し込み(まぁ、偶然そのコースにいったみたいだけれど)、マークについたヨン・ア・ピンを振り切って、思い切りよく右足を振りぬいてみせた。お~。もうすべてが完璧なスーパー・ゴール! イッツ・ビューティフル!
 この日の2ゴールで俺は、柴崎が近い将来、遠藤の後釜として日本代表の中盤に君臨する日がくることを確信した。いやぁ、柴崎、素晴らしすぎ。
 試合はその後、逃げ切るために時間稼ぎをしようとした鹿島の選手にがんがんイエローが出てしまって、最後がちょっと締まらなかったけれど、でもまあ、苦しいシーズンの終わりの苦しいタイトル・マッチだったので、致し方なし。記録に残るのはアントラーズが勝ったって事実だけだし、とりあえず結果オーライ(……って今年はほんとこの言葉ばかり使っている)。なんとこれにてアントラーズは6年連続のタイトル・ホルダーなったわけだし。いやはや、なんともすごいクラブだ。
 しかし、これで来年もジョルジーニョの続投は確定だろうなぁ。それはちょっとどうかと思うのだけれど、でもまぁ、選手と監督の両方でナビスコ杯を制した史上初の男にそんなことをいうのも失礼なので、来年はリーグ戦でもちゃんとしたサッカーを見せてくれることを信じて、彼を応援してゆくしかないかと思う。
(Nov 04, 2012)

オマーン1-2日本

ワールドカップ最終予選/2012年11月14日(水)/マスカット(オマーン)/BS1

 2012年最後の代表戦は、W杯最終予選、オマーンとのアウェイでの一戦。
 W杯最終予選もこの試合から早くも後半戦に突入。日本はここまで3勝1分の勝ち点10で、勝ち点5のオーストラリアほかに大差をつけてリードしている。最近の日本代表の強さからすれば、W杯出場はまったく問題なし。あとはどれだけ早く出場を決めるかだけが焦点だとさえ言える状況。
 ただ、今回の試合については、いくつか不安要素はあった。珍しく直前に親善試合がなく、ぶっつけ本番で臨むアウェイでの試合だし、オマーンは気温30度を超えるという。すでに冬の欧州でプレーしている選手たちにとっては、気温差が大きな敵になりうる。
 加えて今回は香川と内田篤人が怪我のためいない。でもまぁ、いまの代表は中盤とサイドバックのタレントには事欠かないし、とりあえず本田はいるので、最近は彼がいれば百人力だから、まず大丈夫だろう……と思っていたのだけれど。
 その本田くんがこの試合はまるで駄目。まーったく存在感なし。こんなに本田が生彩を欠く試合を観たのもひさしぶりな気がする。最近は「きょうはよくないかな……」という試合でも、ここぞというところで活躍しては、やはりさすがと思わせてきた本田だけれど、この試合ではまったくいいところがなかった。
 つまりこの試合は、そんな本田不調、香川不在という、いまの日本代表の二枚看板に頼れない試合だったわけだ。とうぜん苦戦必至……だったかというと、意外とそうでもない。前半の早いうちに先制できたこともあり、(危なっかしい場面はいくつかあったけれど)全体的には余裕の試合運びができていた。終盤になって、セットプレーから追いつかれたときには残念ながらドローかと思ったけれど、そこからまた追加点を奪い、きっちり勝ち点3を取ってみせたんだからあっぱれ。決して楽な試合ではなかったにもかかわらず、それでもホームでここまで無敗というオマーンに競り勝つんだから、やはりいまの日本代表は史上最強だと思う。
 それにしても、この日の2得点はどちらもとてもいいゴールだった。
 1点目はようやく生まれた清武のA代表・初ゴール。左サイドから長友が蹴り込んだクロスが、相手DFのミスでゴール前に流れた、その先に詰めていてフリーで決めたもので、ある意味ごっつぁんゴール的だったけれど、あそこへ詰めていたってのがポイントだろう。清武えらい。なにより、いままで代表ではゴールに嫌われつづけてきた彼が、香川不在のこの試合でようやくゴールを決めたって事実がとても重要だと思う。
 でも、さらに痺れたのが決勝点となった2点目。残り15分というあたりで、吉田麻也のファールから直接FKを決められ(マヤ~)、同点になって大フィーバーの満員のスタンドを、あのゴールは一瞬で静まり返らせた。
 得点の場面は、途中出場で左サイドに入っていた酒井高徳からのクロスを、ニアに飛び込んできた遠藤が右足アウトサイドにあててファーに流し込み、その先に飛び込んできた岡崎が泥臭くゴールへ押し込んだもの。ほんとにもう、最高のカウンターだった。
 この場面では、得点に絡んだ3人、それぞれの立ち位置がよかった。
 お膳立てのクロスをあげた酒井高徳は、たびたび代表に召集されるも、長友の陰に隠れて出番がない状況がつづいていた。所属クラブの監督が「使いもしないのに呼ぶな!」と怒っているという噂もあるので、この日の出場――後半15分くらいから、なんとワントップで出場していた前田に替わって出てきた――は、そんな状況を踏まえてのザッケローニなりの配慮だったのではないかと思う。そのチャンスにしっかり決勝点に絡むプレーでアピールできてよかった。
 まぁ、いまとなると長友の牙城はそう簡単には崩せないだろうけれど(プレーもキャラもいまの代表には欠かせなさすぎる)、いざというときにバックアップとして、彼のようなプレーヤーがいるってのは心強い。
 それにしても、こんなふうに左サイドでは長友と酒井高徳、右サイドでは内田篤人と酒井宏樹(この日のスタメン)がライバルとしてしのぎを削り、さらには両サイドができるベテランの駒野がバックアップに控えているという図式はなんとも頼もしい限りだ。向こう数年はサイドバックの人材不足で悩まされることはなさそう。
 ゴールを決めた岡崎もこの試合が故障明けだっただけに、結果が出てよかった。前半から彼らしいプレーを見せてくれていたけれど(前のブラジル戦がゼロトップだったので、前田ともども、やはりFWがいると違うと思わせた)、大事な試合で活躍できないというかつてのイメージを払拭するこの日のゴールはでかかった。
 そして個人的にはなにより感銘を受けたのが、そのふたりのあいだを取り持って得点につなげてみせた遠藤。
 この日は本田が目立たなかった分、中盤の底からボールをつないで日本のリズムを作っている遠藤のクレバーなプレーぶりは最初から余計に好印象だったのだけれど、チーム最年長の彼が、試合時間も残り少なくなったあの時間帯にあの位置でボールに絡んでいるという事実には、なんとも感動的なものがあった(細貝が入った後半途中からは、攻撃的なポジションへと移っていたというのはあるにしろ)。守備に攻撃にと大車輪の活躍で、ほんとチーム最年長だとは思えない。
 そういや、この前のブラジル戦では、ついに代表キャップで歴代一位の新記録を達成していたんだった。この分ならばブラジル大会は平気でいけちゃうだろう。そうなるともう当分彼の記録を抜ける選手なんて出てくるまい。いやぁ、遠藤、素晴らしいや。昔から好きだったけれど、最近になってますます好きになった。
 試合のほうは、最後に時間稼ぎのために投入された高橋秀人が、またもや出番がないまま試合終了の笛を聞きそうになる一幕などもあったりしたけれど(幸い今回は30秒くらいはピッチに立てた)、そのほかは問題なくそのまま終了。日本が勝ち点を13に伸ばし、W出場に王手をかけた。
 この試合では、後半途中から長友を残したまま、前田に替えて酒井高徳を入れて、本田のワントップにしたり、そのあとで細貝を入れて、遠藤を前に上げたりといった(最終的にはこれで決勝点を呼び込んだ)ザッケローニの采配もおもしろかったのだけれど、ちょっと長くなったのでここでおしまい。そういやスタメンを書いてないけれど、出場した選手の名前はだいたい出てきたはずなのでよしとする(あとは川島、今野、長谷部かな。みんなご苦労さま)。
 いやぁ、それにしても順調順調。日本サッカーの未来は明るい……といいたいところなんだけれど、この二、三日前には、3大会連続でU-20W杯の出場権を逃したなんてニュースも伝わってきた。A代表はこんなに強くなっているのに、なぜに若い子たちは結果を出せていないのか不思議だ。
(Nov 16, 2012)

鹿島アントラーズ3-3ベガルタ仙台

J1・第32節/2012年11月17日(土)/カシマサッカースタジアム/BS1

 J1も残りあと3節。優勝は広島か仙台のどちらかで決まったようなものだけれど、残りわずかだし、ここからはアントラーズにこだわらず、めぼしい試合を見つくろって観ることにしよう──と思った途端、この期におよんでアントラーズ戦の放送がありました。というのも、対戦相手が2位のベガルタ仙台だったから。
 仙台は去年、今年と本当にいいサッカーをしている。震災を乗り越えての飛躍はとても立派だし、そんなだから、どちらかというと広島よりは仙台に優勝させてあげたいと思うものの、かといってアントラーズの負けを願うわけもなく。なんたって、こちとらいまだ残留さえ決まっていないんだから、ひとさまのクラブを応援している場合じゃない。ということで、仙台には勝たせてあげたいものの、鹿島にも負けてもらっちゃ困るという、なんとも困った心境で観戦することになった対仙台戦。
 この日はスタメンを見て、おっと思う。なんと増田が先発だ~。しかも曽ヶ端、西、岩政、青木、新井場、小笠原、本田拓也、柴崎、増田、興梠、大迫という純国産メンバー構成。なんでもドゥトラは腰痛だかなんだかで、ベンチにも入っていなかった。増田のスタメンは、遠藤が出場停止だったからだと思われる。
 しかーし。この増田くんが残念なことになってしまう。仙台の見事なカウンターであっという間に2点を先制されると、前半わずか26分にジュニーニョと交替。
 いや、僕も観ていて、ちょっと残念な出来だなと思っていたんだ。なまじ、右サイドに入った柴崎と大迫、興梠の3人がいい形の連係を見せて、相手ゴールを脅かしていたので、そこに入れないでいる増田がなおさら残念だった。
 そしたらあっという間の2失点(赤嶺とウィルソン)。しかも2点目の場面では、相手の攻撃をスライディングで止めにいった増田が、ボールに触れずに右サイドの突破を許し、そこから得点を許してしまっている。あれを責めるのは気の毒な気もするけれど、でも正直なところ、印象はよくなかった。
 なんにしろ、前半途中ではやくも2点のビハインドを追ってしまったことで、ジョルジーニョは積極的に手を打って出る。もともと、あまりお好きでないらしい増田(しかもこの日は攻守ともに精彩を欠く)を早々に見限り、ジュニーニョを投入。さらにはその後10分もしないうちに、本田拓也を下げて、本山を入れてくる。
 これにはびっくりだった。前半30分ほどのあいだに交替カードを2枚、しかも極端に攻撃的な形で切ってきたのだから。「この試合は絶対に負けないぜっ!」という強い意志を感じさせる采配だった。
 そんなジョルジの意志表示に、選手たちも答える。本山が出てくる3分ほど前に、大迫とのコンビネーションから興梠が右足をコンパクトに振りぬき、追撃のゴールを決めてみせた。
 ただ、残念なことに、そのあと赤嶺に2点目のゴールを決められてしまう。この日の赤嶺は切れ切れだった。特に2点目のゴールラインを割りそうなクロスに飛び込んできて角度のないところから決めたヘディングは敵ながら見事のひとこと。なぜにFC東京はこの選手を手放したんだろう、もったいないと思ってしまうようなあっぱれな活躍ぶりだった。
 でまぁ、前半を1-3という悲惨なスコアで折り返しはしたものの、こちらもやられっぱなしではいない。
 後半は開始わずか2分にジュニーニョの左からのクロスに大迫が飛び込んで、2点目を奪う。そして後半は攻めに攻めまくって、ついには柴崎、本山のコンビネーションから、最後は興梠が決めて同点。そのまま勝てば首位だった仙台を、無念のドローに追い込んでみせた。
 いや、引き分けに終わりはしたけれど、両チーム3ゴールずつ、そのどれもが素晴らしいゴールばっかりの、とても見応えのある一戦だった。特にジュニと本山が入ったあとのアントラーズの連係のよさは、観ていてとても楽しかった。今年観たアントラーズの試合では、いちばんおもしろい試合だったかもしれない。いやぁ、満足、満足……。
 ……とか言っていられたのは、試合終了後の3時間だけ。そのあとの試合で、アントラーズより下位にいた大宮、神戸、ガンバの3チームが勝ってしまったため、これら4チームが降格ラインを挟んで、勝ち点3差の中にひしめく状況に……。
 これはつまりどういうことかというと、残り2試合で万が一アントラーズが2連敗しようものならば、そして、あとの3チームがそろって1勝でもした日には、アントラーズがJ2降格するってことなんだよ。おいおい、マジかよ。洒落になんねーじゃん。
 しかも困ったことに、この状況下での残り2節の対戦相手が、名古屋と柏とくる。勝ち点、計算できねーじゃん。いやはや、まさかこの期に及んで、こんなドキドキな状況に追い込まれようとは……。
(Nov 19, 2012)

名古屋グランパス1-2鹿島アントラーズ

J1・第33節/2012年11月24日(土)/豊田スタジアム/BSスカパー!

 なんとかアントラーズが残留を決めたと思ったら、その裏でサンフレッチェ快勝、ベガルタ惜敗で、最終節を待たずして、サンフレッチェ広島の初優勝が決まってしまったという。そんな悲喜こもごもなJ1第33節。
 この日のアントラーズは小笠原が累積警告で出場停止。さらに興梠が体調不良で欠場ということで、スタメンは、曽ヶ端、西、岩政、青木、新井場、柴崎、本田、遠藤、ドゥトラ、ジュニーニョ、大迫というメンツになった。まぁ、ドゥトラと遠藤が戻ってきたので、スタメンとしては特に問題のない顔ぶれではある。
 対する名古屋グランパスはケネディが故障中ということで、なんと闘莉王のワントップ。そういう布陣で最近戦っているって噂は聞いた気がするけれど、まさかこの試合でもその形をとってくるとは思わなかった。戦力が圧倒的に足りないならばともかく、ベンチに永井や金崎を温存しての布陣だから、いまいちピクシーの意図がわからない。
 まぁ、闘莉王のFWはけっこう効いていたんだけれど(というか、十分プロパーなFWとしてやれそう)、それにしても、なにもFWの玉田にトップ下をやらせて、永井や金崎にベンチを温めさせてまで、DFの闘莉王のワントップで戦わなくたってよさそうなものだ。いまの名古屋の戦術には、ターゲットとなる背の高い選手が欠かせないってことなんだろうか。なんか、よくわからない。
 わからないといえば、2-1とこちらのリードで折り返した後半の頭から、永井と金崎を入れてきたのだけれど──前半で勝ってはいたものの、けっこう押されてはいたので、ここにあの二人が入るのかよと思って、正直びびった──、そのふたりと入れ替わりに藤本淳吾と小川を下げてしまったのもわからない。さほど目立っていなかった小川はともかく、藤本はよかったと思うんだけれどなぁ。藤本を残して永井、金崎が入ってきたほうが、僕としては嫌だったので、この交替には疑問をおぼえた。
 まぁ、ただ思い切りのいい采配であることは確かで、名古屋は前半に先発の三都主が負傷交代していしまっていたので(アレックス、ひさしぶり~とか思っていたら、すぐに替わってしまって残念だった)、この時点でもう交替カードを使い切ったことになる。後半開始とともにすべてのカード切り終えてしまうなんて、よほど無謀か、勇気がないとできないだろう。少なくてもザッケローニにはできない采配だと思う。その点にピクシーの選手たちへの強烈な意思表示を見た気がした。ちゃんと追いつけ、追い越せよって。
 でも残念ながら、試合はその後は動かず、こっちのもの。勝ち点3を積み上げた鹿島がなんとか残留を決めた。対する名古屋は4位から6位に順位を下げて、目の前にあったACL出場権獲得に赤信号が灯ってしまったという。勝負の世界はきびしい。でもまぁ、前回戦ったときにはどちらも同じように低迷していたのに、今回はこちらは残留争い、あちらは3位争いだってんだかから、差はつけられている。
 この日の2ゴールはどちらもドゥトラ。1点目は名古屋DFダニエルの不用意なプレーからボールをかっさらって決めたもの。2点目は大迫のシュートを楢崎が弾いた、そのこぼれ球を押し込んだもの。大迫のシュートも、中盤で本田拓也が相手ボールをインターセプトしたのが起点となったもので(本田の大迫へのロングパスがナイス)、両方とも名古屋のミスからだった。ピクシーはこれにはそうとうおカンムリだった模様。
 グランパスの得点はセットプレーからの増川のヘディングで、増川がゴールのあとポストに直撃して怪我したかと心配したりもした。幸い、なにごともなくてひと安心。丈夫でよかった。それとともに、相手の得点がこの1点で終わってよかった。なんだかんだいって、やはり名古屋は強いチームだよなぁと思った。
 そういや、名古屋グランパスはこの試合の前日だったか、ストイコヴィッチ監督の来季の続投を発表している。心なしか、今年のピクシーはずっと表情が冴えない気がしていたので、僕は今年限りで退団するんじゃないかと予想していたのだけれど、見事はずれた。ピクシー、これでトニーニョ・セレーゾと並んで、Jリーグの外国人監督最長記録とのこと。いつの間にか、そんなに長いことやっているんだ。この頃は本当に月日の流れるのが速いことよ……。
 なんか、名古屋の話題ばかりになってしまっているけれど、アントラーズの話をすれば、この試合で個人的にいちばん印象的だったのは、2得点のドゥトラよりも、ノーゴールに終わったジュニーニョだった。
 いやぁ、ジュニーニョ、とても積極的にシュートを打っているのだけれど、打っても打っても、決まらないこと、決まらないこと……。どう考えたって1点だろうって、どフリーの1対1とか止められちゃうし。あのへんの決定力のなさには、やはり衰えを感じないではいられない。
 とはいえ、35歳という年齢を考えれば、あれだけの運動量で攻守に駆け回る姿はあっぱれだと思う。ゴールこそ決められなかったけれど、惜しいシュートはいくつも打っていたし。ひとつボタンを掛け違えれば、大量得点の可能性だってあるプレーぶりだったと思う。今年の起用方法からして、来年も鹿島にいるか、怪しいものだけれど、僕としては、できればもう一年、彼のプレーを見たいと思っている。
 以上、アントラーズ戦についてはこんなところ。
 それにしても、今節での広島の優勝は意外だった。まさか仙台が17位で降格ほぼ確定の新潟にホームで負けようとは……。まぁ、新潟もまだ降格が確定していない分、仙台にとっては難しい試合だったのかもしれないけれどなぁ。最終節に優勝のかかった一戦が観られるものと思っていただけに、(広島には悪いけれど)それが実現しなくて残念だった。
 意外といえば、3位、4位だった浦和、名古屋がともに敗れて、鳥栖と柏と順位が入れ替わってしまったのもびっくりだ。鳥栖3位って、おいおい。柏にしろ、いつの間にそんな順位に。次節はこの4チームが勝ち点1差にひしめくACL出場権をかけた3位争いにも要注目。
 さらに注目度の高い残留争いでは、ガンバ大阪が最後まで16位から抜けたせず、ついに降格のピンチに……。
 最終節では、セレッソ、神戸、ガンバ、新潟の4チームが残留をかけて戦うことになる。
 すげーなーと思うのは、このうち神戸の対戦相手が優勝した広島で、新潟の相手が最下位の札幌ってところ。そしてセレッソが川崎、ガンバは磐田。
 ジュビロがこの十試合で白星なしってのを考えると、順位が低いガンバと新潟のほうが星が拾いやすい状況にある。ただ、ガンバだけがアウェイで、あとはホームというアドバンテージがあったりする。さらには、セレッソは山口蛍が、ヴィッセルでは田中英雄が今節レッドカードで、次節は出られないという悪条件が重なる。こうなると、最終的にどうなるかさっぱり予想がつかない。
 得失点差から計算したところでは、残念ながらガンバか新潟、どちらか片方の降格は確定。あともうひとつの降格チームがどこになるかは、最終節の星勘定しだい。
 さて、ガンバ大阪はJ1残留を果たせるのか──。
 今野はFC東京につづけて、再びJ2降格という悲劇を味わうことになるのか──。
 ということで、優勝は決まったけれど、最終節まで要注目の試合はつづく。
(Nov 25, 2012)