2010年12月のサッカー

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  1. 12/04   C大阪6-2磐田 (J1・第34節)
  2. 12/25 ○ 鹿島2-1名古屋 (天皇杯・準々決勝)
  3. 12/29 ○ 鹿島2-1FC東京 (天皇杯・準決勝)

セレッソ大阪6-2ジュビロ磐田

J1・第34節/2010年12月4日(土)/キンチョウスタジアム/BS-TBS

 Jリーグ2010年シーズンの最終節。
 例年だと優勝が決まるこのタイミングで、優勝争いとまったく関係ない試合を観なくちゃならないってのはさびしいものがある。というか、そもそもアントラーズの試合は放送がないんだから、本来ならば、最終戦だからとわざわざ観なくてもいいのだけれど、なんかこう毎年、開幕戦と最終戦はどこの試合であろうと観るのが当然のことになっていたし──まあ、それは例年だと優勝が決まるのがこの試合だったからだけれど──、これで1年が終わり、向こう3ヶ月はJリーグが観られないと思うと、それはそれでさびしくて、やはり観ておかないとすまない気分になる(まあ、まだ天皇杯があるけれど)。
 ということでBSで放送された2カードのうち、このセレッソ-ジュビロ戦を観ることにした。もう一試合のレッズ-ヴィッセル戦にも興味はあったのだけれど──レッズのフィンケ監督は今季限り、ポンテも退団だというし、ヴィッセルはJ2降格がかかった試合だったので──、やはりアントラーズとACLの出場権をかけた3位争いをしているセレッソを観ておくべきだろうと思った。なんたってセレッソのサッカーはおもしろいと評判なのに、今季は一試合も観たことがなかったので。
 そしたら、その噂にたがわず。セレッソが、つえーのなんの。
 いや、キックオフから5分もしないうちに、FWのアドリアーノのプレーを観て、おいおい、この人、やべーんじゃないの?と思ったんだった。やたらと速くて切れがある。こんなFWに、家長──この日はボランチの位置でプレーしていた──と乾という、若手屈指のテクニシャンが中盤からボールを供給するんだから、そりゃまずいでしょう。願わくばセレッソには負けていただきたいのだけれど、どうにも観たところ、そうは問屋が卸しそうにない。
 そしたら案の定。この日はこのアドリアーノが大爆発。前後半でそれぞれ2点ずつ、計4点をひとりでたたき出してみせた。それも単なる個人技からではなく、どれも見事な連係によってのゴール。家長、乾だけでなく、清武という、これまた21歳のMFがいいアシストをみせる。うわー、つええや。ここまで4位は伊達じゃなかった。
 対する磐田も、アジア大会優勝に大きく貢献したという山崎亮平などの活躍で、2点は返したのだけれど(決めたのは成岡と前田)、どちらもその得点の直後にさらなる追加点を奪われ、追い上げムードに水を差される形に。
 この日のジュビロは最終ラインがゆるゆるで、セレッソの強力な攻撃陣の前になすすべがない感じだった(そういえばGKもなぜか川口ではなかった)。唯一の救いは、前田が1ゴールを決めて、(名古屋のケネディと同点首位ながら)得点王に輝いたことくらい。
 なんにしろ、この日はそんな風に華麗なるセレッソ劇場を見せられているうちに、次々と気になる途中経過が入ってきた。それも悪い知らせばかり。おかげで目の前の試合そっちのけで、裏で行われているその他の試合の途中経過を気にすることになった。
「清水0-1G大阪」 あぁ、ガンバが早々と先制してる。
「山形1-0鹿島」 うわーっ、なにやってんだ~、先制されんなよ~。
「浦和0-1神戸」 おいおい、神戸が先制しちゃっちゃったよ。FCまずいじゃん。
「京都1-0東京」 げっ、なんで京都に点取られてんの、FC。
「浦和0-2神戸」 うわ、レッズよわっ。FC、まず過ぎ……。
「山形1-1鹿島」 よし同点っ。あと1点!
「浦和0-3神戸」 こりゃ……。
 ……。
 残念ながら、ここから先、山形-鹿島戦のスコアは動かなかった。
 そしてFC東京が京都に追いつくこともなかった。
 結局、アントラーズはモンテディオと引き分けに終わり、ガンバとセレッソに抜かれて4位に転落。最後の最後でACL出場権を確保しそこなった。
 そして最終的に京都サンガに0-2で負けたFC東京も、0-4とレッズに大勝したヴィッセルに追い越されて、湘南、京都につづく最後のJ2降格が決定してしまった。
 まあ、アントラーズの4位は仕方ない。この日の試合を観たかぎり、セレッソはベスト3に入るにふさわしいサッカーをしていた。それに比べて、アントラーズは勝てる試合をこぼしすぎた。まあ、それでもまだ天皇杯だってあるし、ACL出場の可能性は残っている。4連覇を達成できなかったのは残念だけれど、悲観するほどひどいシーズンではなかったと思う。そもそもFC東京の悲惨さと比べたら……。
 いやぁ、FC東京のJ2降格はほんとにショック。あぁ、来年は味スタでのアントラーズ戦は観られないのかぁ……。
(Dec 05, 2010)

鹿島アントラーズ2-1名古屋グランパス

天皇杯・準々決勝/2010年12月25日(土)/カシマスタジアム/BS(録画)

 今年の国内サッカーもあと2試合。J1王者・名古屋グランパスをカシマスタジアムに迎えての天皇杯・準々決勝。
 今年と去年のJ1王者どうしの直接対決だというのに、この試合は録画放送。なんでやねん!──と叫びたくなるところだけれど、その理由はグランパスの顔ぶれを見ると一目瞭然。
 ケネディ、ダニルソン、ブルサノビッチ、マギヌンという外国人選手が怪我や契約満了でひとりもいないし、日本代表の闘莉王、玉田という攻守のかなめも怪我でベンチ外とくる。さらには今年のJリーグMVPの楢崎までも温存。
 かく言うこちらもマルキーニョス、ジウトンの両ブラジル人がすでに来季の構想からはずれて帰国してしまっているとはいえ、それでもそれ以外はリーグ戦のときのレギュラーが顔をそろえている。いくらなんでも常勝軍団のプライドにかけて、飛車角落ちの名古屋に負けるわけにはいかない。
 なにより重要なのは、この試合がマルキーニョス退団後、初となる興梠、大迫のツートップでの試合だということ。来季に向けて、新たなブラジル人FWを獲得する可能性は高そうだけれど、願わくばそれよりこの若手コンビに大活躍を見せて欲しいところだ。このふたりを軸に戦えるか否か。今回の天皇杯はそのテストという意味でも重要な意味を持っていると思う。
 果たして、この日の試合ではこのふたりがみごと期待にこたえてくれた。ツートップのアベック・ゴールでのベスト4進出は非常に嬉しい。
 興梠の先制点は前半わずか7分のこと。野沢がセンターライン付近から蹴り込んだボールに反応して、ディフェンスラインの裏へ入り込んみ、ファースト・トラップはややミス気味で流れてしまったけれど、しぶとくそのボールに追いすがって、貴重な先制点を叩き込んだ。
 前半の鹿島はその先制ゴールで優位に立ったこともあり、ほとんど危なげない試合運びだった。けれど後半に入ると名古屋にボールを支配される時間が増える。で、ついには同点ゴールを許してしまう。
 失点は途中出場の巻(弟)がヘディングの競り合いから落としたボールに、素晴らしいタイミングで突っ込んできた小川が頭であわせたもの。敵ながらナイス・シュートだった。うーん、さすがにJ1王者。これだけ主力選手を欠いているわりには手強い。
 とはいえ、名古屋サイドが同点ゴールに沸いたのもわずか2分間だけだった。そのあとすぐに大迫のゴールが決まって、ふたたび鹿島が名古屋を突き放す。
 ゴール前でフェリペからのアシストを受けた大迫は、素早い切り返しで相手DFをかわすと、迫力はないけれど、きっちりと枠をとらえたシュートを蹴り込んでみせてくれた。で、これが決勝ゴール。やたっ。
 そういや、この試合のあとには大岩の引退セレモニーがあったのだけれど、岩政が前半なかばに足を痛めてしまうというハプニングがあって、思わぬ早い時間にその大岩に出番がまわってきた。サッカーの神様はけっこう粋な計らいをする。
 ということで、最後になったけれど、この日のスタメンは曽ヶ端、新井場、岩政、伊野波、宮崎、小笠原、中田、野沢、フェリペ、大迫、興梠。途中出場は大岩、青木、當間。
 大卒2年目のサイドバック宮崎と、五輪代表でも活躍している當間のふたりのプレーを見るのはこれが初めて──って、まあ、見たって言えるほど注目していなかったので、これといった印象はないけれど。
 ということで、今年のアントラーズは無事に天皇杯ベスト4に駒を進めた。準決勝での対戦相手はJ2降格の決まったFC東京。あちらは下手に天皇杯に優勝してACL出場なんてことになると、二兎を追う者は一兎をも得ずで、来季のJ1昇格を逃してしまう危険性があるので、ここはきっちりと引導を渡して、J2に専念させてあげたい。
(Dec 25, 2010)

鹿島アントラーズ2-1FC東京(延長)

天皇杯・準々決勝/2010年12月29日(水)/国立競技場/NHK総合

 年内最後の公式戦、天皇杯準決勝、FC東京戦。
 アントラーズは準々決勝で足を痛めた岩政にかわって大岩がスタメン。あとは前の試合と一緒。岩政は全治2週間だとか。アジア杯の代表にも選ばれているのに、このタイミングで怪我とはなんてついてないんだ……。
 まあ、それでも今季限りで引退の大岩がスタメンってのも、チームの士気を高める上ではプラスに働きそうだからいいかな……と思っていたのだけれど。
 中3日の疲労のせいか、その大岩の動きがどうもいまいち。前半の途中からは、平山やリカルジーニョを止めきれないシーンが連続する。そのうちに平山にみごとなダイレクト・ボレーのオーバーヘッド・シュートを決められて、FC東京に先制を許す羽目に……。
 平山のシュートはクロスバーにあたって真下に落ちたので、一瞬セーフかと思ったけれど、その直後にこぼれ球を椋原に豪快に蹴り込まれてしまってアウト(記録は平山のゴール)。ぐうの音も出ない見事な得点シーンだった。
 これで1点を追う立場になってみて、あらためてFC東京の強さを実感した。なんたってリーグ戦で戦ったときと違い、この日のFCはスタメンが揃っている。今野、森重、徳永、キム・ヨングンという日韓代表(候補?)で固めた最終ラインの前には、米本、梶山のダブルボランチが控えている。こうなるとなかなかゴールがこじ開けられない。なんでこのチームがJ2に落ちるんだか、不思議で仕方ない。
 とくにいやらしいかったのが米本。守備力が高い選手だとは思っていたけれど(オガサとの一対一に負けないんだからびっくりだ)、それだけにとどまらず、要所要所で攻め上がっては、高い位置でこちらのボールをインターセプトして、自軍のチャンスを生み出してみせる。ったく若いくせして、この子は敵にすると難儀だわ。いやはや、感心しました。
 なんにしろ1点のビハインドを負って、劣勢のまま前半は終了。で、後半に入っても流れはこちらにこない。中盤がどうにも機能していなくて、興梠、大迫のツートップにはまったくボールが入らない。この悪い流れを断ち切ってくれたのが、途中出場の本山だった。
 フェリペ・ガブリエルに替わって本山がピッチに立った途端、いままで機能不全の感があった鹿島の中盤がようやく活性化し出した。
 前の試合では、以前にくらべてずいぶんチームにマッチしてきたかなと思わせたフェリペだったけれど、やはりこの人はブラジル人助っ人としては、どうにも力不足の感が否めない。献身的なプレーには好感が持てるものの、得点力があるでもなく、決定的なラストパスを出すシーンなどもなくて、見ていてじれったくて仕方ない。
 それにくらべて、本山のなんて上手いことよ。足を痛めているせいか、この日は運動量はまったくなく、前線にはったままだったけれど(なるほど、これじゃスタメンでは使えないやと思った)、それでもいざボールを持ったときのプレーには、あいかわらず目をみはるものがある。もうワクワク感が違う。なんかやってくれそうな雰囲気がありあり。
 はたしてアントラーズの同点ゴールが決まったのは、本山がピッチに入った6分後だった。野沢のトリッキーな{つな}ぎから宮崎があげたクロスを大迫が頭でドカンと決めたもの。本山自身は得点にかかわっていなかったと思うけれど、それでもそこに至る過程で中盤にいい流れを呼び込んだのは、確実に彼だった。
 本山投入でこちらに傾いた流れはその後も変わらず。もしも同点のまま終盤を迎えて、FC東京が石川を投入してくるとまずいかなと思っていたのだけれど(こちらの本山と同じように、FCも石川を怪我のため温存していた)、幸いこちらが中盤を制した状態では、石川が生きることはなかった。
 とはいえ、FC東京の守備力が突然衰えたりもしないので、その後は2点目を決めることもできず。試合は延長戦へ。で、延長前半5分にFCの米本が2枚目のイエローカードをもらって退場してしまう。
 中盤の底で抜群の存在感を発揮していた米本がいなくなったことで、こちらの負けはなくなったと思った。そして同時にFC東京の天皇杯優勝もなくなったと思った。いっちゃ悪いが、たとえ決勝に進んだところで、米本ぬきでFC東京が勝てるとは思えない(それくらい米本の存在感は抜きんでている)。
 さぁ、こうなりゃあとは、こちらが残り時間で試合を決められるかどうかだ。それとも同点のままPK戦になってしまうのか。数的有利になったため、試合は完全に鹿島ペースだったけれど、どうしてもあと1点が奪えない。
 かれこれするうちに延長後半もついにロスタイム。あぁ、このままPK戦かぁ……と思った、その最後の最後のワンプレーで。
 うぉー、興梠の決勝ゴール! しかも起点となったのは本山の芸術的なラスト・パス! つないだのは大迫! そして歓喜の渦がまきおこる中で、そのまま試合終了の笛……。
 2010年の最後の試合は、そんな最高に劇的な幕切れとなった。いやぁ、いいもん見せてもらいました。ありがとう、アントラーズ! さぁ、次は3年ぶりの元日決戦だ~。
 そうそう、この試合では、オリヴェイラ監督の勝負師としての意外な側面を見たシーンがふたつあった。
 ひとつ目は、前半の出来を見て、後半開始とともにさっさと大岩を引っ込めたこと。ただでさえCBを前半だけで交替させるなんてことはそうそうないし、それでなくてもその選手というが、この大会を最後に引退することが決まっている大岩だ。なるべく長くプレーさせてあげたいと思うのが人情だろう。それなのに、そんな温情を振り切って、勝負に徹した非情の采配だった。
 でもその効果は十分にあったと思う。後半、大岩と替わった青木がボランチに入り、中田浩二がCBに入ってからは、前半よりも守備が安定したようにみえた。この調子だと、決勝戦もこの形で臨む可能性が高そうな気がする。大岩の現役ラスト・ゲームを前にオリヴェイラ氏がどんな決断を下すのか。要注目。
 もうひとつが延長戦で、佐々木を投入したシーン。すでに相手は米本が退場になって数的に不利になっている。放っておいてもこっちの有利は動かないのだから、交替させるならば、すでに疲れが見え始めている上に、もう一枚イエローカードをもらうと決勝戦に出場できなくなってしまう興梠だろうと思ったのに、オリヴェイラさんが下げたのは野沢だった。
 先のことを考えるよりも、FWを3枚にして攻撃を厚くし、あくまで目の前のこの試合を勝ちにゆくんだ──そんな指揮官の意志が透けて見える積極采配だった。でもその結果、最後までピッチに残っていた興梠が決勝ゴールをあげたのだから、その采配がずばり的中したことになる。
 リーグ戦で勝ちきれない試合がつづいたことで、オリヴェイラ・マジックにもやや陰りが見えたかと思ったりしたけれど、この試合での采配を見て、やっぱりこの人は優れた指揮官だとあらためて思った。
(Dec 30, 2010)