2007年11月のサッカー

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  1. 11/03   川崎0-1G大阪 (ナビスコ杯・決勝)
  2. 11/11   川崎1-1浦和 (J1・第31節)
  3. 11/14   浦和2-0セパハン(イラン) (AFCチャンピオンズリーグ・決勝)
  4. 11/17 ○ U-22ベトナム0-4U-22日本 (五輪最終予選)
  5. 11/18   浦和0-0清水 (J1・第32節)
  6. 11/21 △ U-22日本0-0U-22サウジアラビア (五輪最終予選)
  7. 11/24 ○ 浦和0-1鹿島 (J1・第33節)

川崎フロンターレ0-1ガンバ大阪

ナビスコカップ・決勝/2007年11月3日(土)/国立競技場/フジテレビ

 今年のナビスコ杯決勝は、Jリーグでも屈指の攻撃力を誇る両雄の対戦とあって、両チームのサポーターではない僕にとっても、それなりに楽しみな一戦だった。
 どちらのチームもナビスコ杯はこれが二度目の決勝進出で、なおかつ前回はあと一歩のところでタイトルに届かなかったのも同じ。で、個人的にはその試合は両方とも、それなりに印象に残っている。
 ガンバの前回は一昨年、初のリーグ制覇を成し遂げた年だった。いまと同じく圧倒的な攻撃力が武器だったにもかかわらず、ジェフに完封を食らって、PK戦で負けた。そのとき、両チームで唯一PKを失敗したのが、いまやPKの名手として有名な遠藤。噂によると彼はJリーグにデビューして以来、これまでに2度しかPKを失敗したことがないのだそうだけれど、そのうちの1回というのがそのときだったわけだ。
 かたや川崎が前回ナビスコ杯決勝に駒を進めたのは00年のこと。その試合の相手というのが、われらが鹿島アントラーズだった。あの頃のフロンターレは今とは違って、なんで決勝まで勝ち残ってきたのか不思議に思ってしまうような弱小チームだったから、こちらとしては決勝戦とはいえ、勝って当然という感じで、拍子抜けするくらいあっさりと優勝が決まってしまった。おかげで妙なものたりなさを味わった記憶がある。
 まあ、そんな風におたがい、過去に決勝戦で敗れているもの同士の対決だったわけだけれど……。
 かたやガンバは遠藤をはじめ、その時にさんざん悔しい思いをした選手たちがいまも中心。いっぽうフロンターレは、あの頃とはすっかり陣容が変わっていて、調べてみた限りでは、当時は我那覇──この日はベンチ入りさえしていなかった──や箕輪、寺田がデビュー2年目とかだったようなので、おそらく前回負けた悔しさを知る選手はこの日はひとりもいなかったんだろう。そういう意味では、タイトルにかける思いという点では、ガンバのほうは強かったんじゃないかと思う。
 で、実際に見てみると、やはり戦力の上でもガンバのほうがひとつ上な感じ。マグノ・アウベスとバレーの2トップ、二川、遠藤、橋本、明神という新旧・日本代表の玄人受けしそうな顔ぶれがそろった中盤に、加地、山口、シジクレイ、安田という最終ラインは、すごく強力だ。GKの藤ヶ谷は、ややネームバリューが低い印象だけれど、この日はいくつかファインセーブを見せていたし、さすがにこのメンツをうしろから支えるだけのことはあると思った。
 まあ、2トップがともに故障明けで、特にバレーの出来がいまひとつだったり、シジクレイが寄る年波のせいか、二つ三つ凡ミスをして、ピンチを招いていたのは気になったけれど、それでもサッカーの内容的には、やはりリーグ2位は伊達じゃないという充実ぶりだった。このチーム、中盤の構成力からいうと、かなりオシム・ジャパンに近い気がする。
 対する川崎は、現在J1得点王のジュニーニョこそ強力なものの、コンビを組むチョン・テセ(鄭大世)──J1では前節、ハットトリックを達成している──がいまひとつ。中村憲剛や谷口など、代表でおなじみの選手もがんばってはいたけれど、それでも最後はセットプレーか、カウンターからのジュニーニョの個人技が頼りという感じがあった。でもまあ、そうやって作り出したビッグ・チャンスの数では、もしかしたらガンバを上回っていたかなという気もする。結局、それらをひとつも決めきれなかったのが痛かった。そういえばマギヌンが出場停止だったのも誤算だろう。
 まあ、とにかく攻撃力が魅力の両チームではあるけれど、決勝戦だけあってまずは守備ありき。中盤のプレッシングが徹底しているから、そうそう得点は入らない。1-0というスコアは、ある程度、予想の範囲内だった。
 決勝点は、バレーが右サイドから入れたクロスを、二川が空振りして、そのうしろの安田理大{やすだみちひろ}が決めたもの。あそこで二川と安田が二枚、ともに相手DFより一歩先んじてゴール前に流れ込んできているところに、いまのガンバのすごみがある気がした。
 十九歳の安田はこれがJリーグ初ゴールだったそうだ。この日の彼と川崎の右サイド・森勇介との一対一は非常に見ごたえがあったし、この試合のMVPに選ばれたのも当然という大活躍だった。
 そういえば、去年のナビスコカップ決勝では、ジェフの水野のゴールでアントラーズが負けたんだったよなあと……。同じ五輪代表で、さらにひと世代下の安田の活躍をみて、そんなことも思い出した。こうやって年々、新しい才能が出てくるのだから、Jリーグも捨てたもんじゃないだろうと思う。
(Nov 04, 2007)

川崎フロンターレ1-1浦和レッズ

J1・第31節/2007年11月11日(日)/等々力競技場/BS1

 前日のガンバとアントラーズの試合の結果いかんでは、レッズの優勝が決まったかもしれないという一戦。例年、J1の優勝争いは12月までもつれるのが常だけれど、今年はレッズがここまでわずか2敗という素晴らしい成績を残しているだけあって、優勝決定もひと月近く前倒しという感じになってしまっている。
 まあ、ガンバとアントラーズが勝ったことで、この試合でのレッズの優勝はなくなっていた。だからアントラーズ・ファンとしては特別、観ないといけない試合ではなかったのだけれど、ふと気がつけば、前日終了時点でレッズとアントラーズとの勝ち点差は5。直接対決も残していることだし、つまりもしこの試合でレッズが負けて、直接対決でアントラーズが勝てば、勝ち点は2まで縮まることになる。なんだ、まったくないと思っていた優勝の可能性が、かろうじて残っているじゃないか──ということで、フロンターレを応援しながら、試合の行方を見守ることにした。
 しかし、やはり全体的な優勝への流れはレッズに傾いているなあと思う。なんでこの一番に、川崎のキーマンである中村憲剛が出場停止なんだろう。川崎が先制して、いい感じで進んでいた試合も、レッズに有利な判定でワシントンにPKが与えられ、ドローになってしまうし……。ACL出場による疲労もあるだろうし、小野や山田を故障で欠いていたりするし、この試合をみる限り、今年のレッズが他を圧倒するような力を持っているという気はしない。それでも、こういう試合に負けないしぶとさは、さすがにきびしい戦いをしてきているだけのことはあるなと思ってしまった。
 対する川崎も、ナビスコカップよりもいい試合をしているように見えた。ジュニーニョのプレーは攻守にわたって、ひとつひとつがワンダフルだし、ナビスコではいまひとつだったチョン・テセも、素晴らしいボレーシュートを打ったり、ポストプレーでの強さを見せたり、随所でおっと思わせた(ワールドカップ予選のライバルとなる北朝鮮の代表選手だと思うと、その活躍ぶりを素直に受け入れられなかったりするんだけれど)。中村憲剛がいない分は、トップ下でスタメンに抜擢された大卒ルーキーの養父{やぶ}という選手が、J初ゴールを決める活躍で埋め合わせていたし、そのゴールをアシストした谷口も、随所で攻撃に絡んでいて、好印象だった。
 なにはともあれ浦和の疲労も手伝ってか、内容的に拮抗した非常におもしろい試合だった。ただ、結果が1-1のドローに終わったことで、アントラーズとレッズの勝ち点の差は6と開いてしまった。得失点差では相手のほうが10も上回っているので、残り3試合でレッズが全敗しない限り、アントラーズの優勝はなし。当然こちらが1敗してもおしまいだし、さらにあいだにはガンバもいる。レッズの最終節の相手が、ここまでわずか3勝しかできず、すでに降格が決まってしまった横浜FCだというのを考えると、鹿島が優勝する可能性は、やはり限りなくゼロに近い。それでもまあ、このままならば、最終節までレッズの優勝が決まらない可能性もあるわけで、そうやって好きなチームが最後まで優勝争いの一角に食い込んでいるというだけでも、サッカーファンとしては十分に幸せなことだと思う。
 でまあ、J1の優勝の行方を気にするのはひとまず置いておいて、明々後日{しあさって}には、アジア・チャンピオンズリーグの優勝が決まる最後の一番が控えている。
 当然その試合では、手のひらを返してレッズを応援することになるわけだけれど、気になるのは、今日の試合の最後に、接触プレーで鼻血を出して、ピッチを退いてしまったワシントン。3週間前の千葉戦で鼻骨骨折をして、この試合ではフェイスガードをつけていた彼は、後半それを外してプレーしていて、不運にも肘打ちをくらって、再び流血の惨事とあいなった。あれは痛いだろう……。本人もむちゃくちゃ興奮してしまい、スタッフにうしろから引き止められるほどの暴れぶりで、イエローカードをもらっていた。累積4枚で時節は出場停止だそうだ。J1の行方を占う上ではおもしろい展開だけれど、3日後にちゃんとプレーできるのか、こころもとない。
 ワシントンのみならず、阿部も腰痛で途中交替していたし、小野や山田もいないし、でもって闘莉王も故障明け。アジアのタイトルを賭けた大一番を目前にして、レッズは満身創痍だ。いったいどうなることやら……。
(Nov 11, 2007)

浦和レッズ2-0セパハン(イラン)

AFCチャンピオンズリーグ・決勝第二試合/2007年11月14日(水)/埼玉スタジアム2002/テレビ朝日

 アントラーズ以外のJリーグのチームを無条件に応援するという──しかも対戦相手はまったく見ず知らずのイランのチームだし──、個人的にはなかなか珍しいシチュエーションだったAFCチャンピオンズリーグ決勝戦の2試合目。
 レッズのスタメンは、GKが都築、3バックが坪井、闘莉王、堀之内、両サイドが阿部と平川で、2ボランチが鈴木啓太と長谷部、トップ下にポンテがいて、2トップがワシントンと永井という構成。これは3日前のフロンターレ戦とまったく同じだった。
 心配されたワシントンの鼻はどうにか大丈夫だったようで、この日は最初からフェイスガードをしていなかった。結果的にゴールこそなかったものの、彼がいるといないでは、相手に与えるプレッシャーがぜんぜん違うだろうから、出場できて、なによりだった。
 阿部は腰痛を押しての出場だったそうで、開始3分のスローインの場面でいきなり腰に手をあてていたのには、おいおいと思わされたものの、その後は特に心配な場面もなく、それどころか貴重な追加点をあげる活躍で、十二分にチームに貢献していた。この試合なんかをみると、やはり阿部の獲得はレッズにとって英断だったなあと思う。小野と山田がいなくても、スタメンになんの遜色もないのは、まさしく彼がいるからこそだろうから。
 とにかく、闘莉王、啓太、阿部、坪井、そして長谷部という、オシム先生のお眼鏡にかなった選手たちがディフェンシブなポジションにずらりと名前を連ねているんだから、そりゃ守備力は文句なしだ。この試合では前半1-0で折り返しながら、後半は防戦一方といった感じになってしまったけれど、それでもしぶとく守りきってみせるその守備力の高さには、とても感心させられた。とくに啓太と闘莉王のプレーはあっぱれ。オシムに重用されるのも当然だと思った。
 得点は、1点目が永井。相手DFのミスでディフェンス・ラインの裏へと流れ込んできたボールを見逃さず、思い切りよく打ったシュートが、GKの手をはじいてゴールネットに突き刺さった。そこまであまりゲームに絡めていない感じだったけれど、決めるべきところで豪快に決めてみせてくれたのが素晴らしかった。こちらもさすが元日本代表。
 2点目は阿部で、たしか左サイドからの長谷部かだれかのクロスを永井がシュートして、それを相手GKがはじいたこぼれ球を、頭で押し込んだもの。後半、防戦一方の展開からの、わずかなチャンスを生かした、貴重な追加点だった。
 いやしかし、2-0というスコアだけみると快勝のようだけれど、内容的にはなかなか苦しい試合だった。アウェイゴール方式のため、1-1でアウェイの試合を終えているレッズは、2点とられたら厳しい立場におちいる。後半のボール・キープ率はあきらかに相手の方が高かったし、W杯でオーストラリアにラスト10分たらずで3点を奪われた記憶を持つものとしては、2点リードしていようと、ちっとも安心できない。ようやく勝ちを確信して、のんびりとした気分で見られるようになったのは、ほんと、ラストの5分くらいだった。タイトルがかかった試合ならではの緊張感もあったから、観ていてちょっと疲れた。
 まあ、なんにしろ勝ててよかった。これで年末のクラブW杯に日本のクラブが──開催国枠などではなく実力で──出場することが決まって、日本人としては嬉しいかぎりだ。さらに来年のACLには、日本から3チームが出場できることが決まり、このままゆけば現在J1で3位につけているアントラーズにも出場権が回ってくる可能性が……。
 ということでアントラーズ・サポーターとしては楽しみ倍増。いや、今年のフロンターレを見ると、下手に出ちゃうと過密日程に悩まされてJリーグで苦戦しそうだから、国内で十冠を目指すんならば、出場しないほうがいいのかなと、弱気になったりする部分もあるけれど、それでもまあ、目標は多いほうが楽しい。こうなればぜひ3位以内を死守してもらいたいと思う。いや、まだかろうじて優勝の可能性だってあるんだった。3位とか言ってちゃいけない。
 なにはともあれ、祝・浦和レッズACL優勝。さあ、次は五輪代表だ。
(Nov 14, 2007)

U-22ベトナム0-4U-22日本

オリンピック最終予選/2007年11月17日(土)/ハノイ(ベトナム)/BS1

 イビチャ・オシム監督が脳こうそくで倒れた翌日、日本中のサッカー・ファンが安否を気づかう最中に行われたオリンピック最終予選のアウェイでの一戦。
 すでに直接対決が終わったカタールに、総得点1の差で首位をあけわたしているだけに、このベトナム戦は勝利が大前提。その上で、この先、日本代表とカタールがともに2連勝して最終予選を終えた場合、総得失点差の争いになることを考えれば──しかもカタールの最終戦がホームでのベトナム戦だとなれば──、この試合では1点でも多くの得点をあげてみせるのが至上命題だった。ここまで4試合を戦って、セットプレーでの3点のみという得点力不足をいかにして打開してみせるか。その答えを期待してた。
 でもスタメンを聞いて、正直なところ、がっかりした。フォーメーションはまたもや伊野波を左サイドに起用した守備的4バックだし、1トップを2トップに修正したのはいいけれど、その顔ぶれが李忠成と岡崎って……。
 いや、李はいいさ。Jリーグでも常時スタメンで出場していて、二桁得点をあげている。いまのFWのなかでは、実績ではトップだから、ある意味、当然だろう。
 でもなんでもうひとりが岡崎なんだろう。彼のどこがそんなにいいんだろう。プレーを見ていても僕にはよくわからなかった。
 確かにこの日の彼は、先制点につながるファールをもらったり、3点目となるPKを獲得したりと、チームに貢献していた。べつに悪い選手だとは思わない。それでも後半、梅崎の強烈なミドルがバーをたたいた場面で、その跳ね返りにひとり詰めていたにもかかわらず、その決定的チャンスにうまく反応できなかったのを見たりしてしまうと、FWとしてはもの足りなさを感じてしまう。あの場面が決められないような選手が、なぜほかのFWを差しおいて、スタメンのチャンスをもらっているんだろう。
 あとで調べてみたところ、岡崎はここまでJリーグでは5得点で、清水でも決して不動のレギュラーというわけではない。ことFWとしての成績では、最近は常にスタメン出場していて、7得点をあげているカレン・ロバートや、少ない出場機会のなかで6得点をあげている興梠のほうが、よほど上じゃないかと思ってしまう。
 そもそもベトナムに高さがないことを考えれば、こういう機会にこそ平山を起用してみてもいいんじゃないだろうか。平山はいまでこそ伸び悩んでしまっているけれど、オランダ1部リーグで8ゴールを決めた実績を持つ選手だ。このまま腐らせてしまうには惜しい素材だろう。なんでそんな彼を飼い殺しにしているんだろう。
 カレンにしろ、平山にしろ、まるで駄目だというならばわからないでもない。でもJ1でもそれなりに出場しているし、二次予選の時には得点をあげて、ちゃんとこのチームに貢献していただけに、なぜいまになって、まったく出場の機会を与えられなくなってしまったのかが、僕は理解できない。おかげでなんとも釈然としない気分で、このチームのサッカーを見守ることになってしまうのだった。
 この日のスタメンはGK西川、DFが内田、青山直、水本、伊野波、中盤が青山敏、柏木、水野、本田佳、そして李と岡崎の2トップという布陣。本田拓也が怪我のため帯同できなかったからといって、柏木をボランチにコンバートしてみせたのも、個人的には気に入らない。なんでこういう大事な試合で、そんな即席フォーメーションを組まなきゃならないんだといいたい。
 まあ、けちばかりつけているけれど、それでもこの試合の前半は上出来だった。早い時間帯に水野のFKから李がヘディングで先制点をあげると、前半なかばには、今度は本田のクロスから再び李が同じく頭で追加点。相手のクリアミスが本田の足元にすっぽり収まったところから生まれたこの二つ目の得点は、じつにきれいな形だった。流れのなかからゴールが生まれたのは最終予選で初めてだし、非常に気持ちよかった。さらに前半も残り少なくなってから、岡崎がもらったPKを本田佳祐が決めて、日本は3点をリードして前半を折り返す。
 守備的な4バックも、この日は(こと右に関しては)ずいぶんとサイド攻撃の意識が感じられた。ただ、せっかくボールを預けてもらった肝心の篤人くんの出来がいまひとつで、攻めあがるはいいけれど、クロスを打てずにボールを奪われてしまう、なんてシーンも多かったのは残念だった。
 まあ、なんにしろ前半は上出来だった。ところが、さらなる追加点を期待した後半がいけない。序盤から劣勢のはずのベトナムにペースを握られてしまい、得点の雰囲気さえなくなってしまう。この期におよんで、ベトナムに攻められてどうする。
 選手交替もよくわからなかった。前半にイエローをもらっていた伊野波に代え、梅崎を投入して、やや攻撃的にシフト・チェンジしたのはまあいいとして、そのあとの交替が青山敏に代えて細貝ってのがよくわからない。結果としてはその細貝が、水野のCKから後半唯一のゴールを決めはしたけれど、あの交替が監督からチームへの、もっと得点を狙えという指示だったとは思えない。どうせならば、2トップを一気に入れ替えるとか、3トップにするくらいのことをして、もっと点を取るんだぞという意思表示をしてみせて欲しかった。ロスタイムに途中出場の興梠がもらったPKは本田が止められちゃうし……。
 ということで、前半は上出来、後半は不完全燃焼という一戦だった。まあ4-0というスコアは決して責められるほど悪い結果ではないと思うし、そのあとの試合でカタールがサウジアラビアに負けたことで、得失点差はどうでもよくなったのだから、結果オーライ。これで次の最終戦でサウジに負けさえしなければ、4大会連続のオリンピック出場が決まる。ホームでの試合でアジアのチームに負けているようじゃ、世界では戦えない。ここは一発きれいに決めて、北京への切符を手に入れて欲しい。
(Nov 18, 2007)

浦和レッズ0-0清水エスパルス

J1・第32節/2007年11月18日(日)/埼玉スタジアム2002/NHK

 この試合にレッズが勝ち、同時刻に行われるガンバとアントラーズの試合で両チームが引き分け以下ならば、J1の優勝が決まるという一戦。
 ただし、そうはいっても今節のアントラーズの対戦相手、柏レイソルは、フランサ、菅沼、李忠成といった攻撃の主軸が軒並み不在だそうで、総合力やモチベーションの差を考えると、その試合が引き分けに終わるとは思えない(とか思っていたのに、実際にはこちらも小笠原が出場停止、中後が故障、内田が五輪代表と、かなり苦しい状況で、大卒ルーキー船山のゴールであげた虎の子の1点を守りきっての薄氷の勝利だったらしい)。なにはともあれ、僕はアントラーズの勝利を確信していたので、初めからこの日のレッズの優勝はないと思っていた。でもまあ、リーグもそろそろ佳境だし、次週にはレッズとの直接対決が控えていることだし、とりあえず敵情視察的な気分で観ておくことにした試合だった。
 レッズは出場停止のワシントンの代わりに、ポンテをトップにあげてきた(田中達也はまたもやベンチ外)。で、長谷部も高めの位置でプレーさせて、ボランチには阿部、右サイドに平川を回して、左サイドが相馬。あとは最終ラインに堀之内の代わりにネネが入っていた。ACL決勝の布陣をベースに、玉突き状にポジションをシフトした感じ。3人も入れ替わっているのに、戦力が落ちて見えないあたりは、やはり選手層が厚い。
 対するエスパルスも五輪代表の山本、青山、岡崎を欠くものの、それでもチョ・ジェジン、フェルナンジーニョ、藤本、市川、伊東輝悦など、おなじみの選手が名前をつらねている。矢島や兵藤、枝村(途中出場)らの若手もいつの間にか知った顔になっているし、さすがにここも4位につけているだけあって、戦力が充実している。伸びざかりの若者たちに混ざって、ベテランのテルがいまだに現役でふんばっているのも、ヒデや前園が引退してひさしいだけに、とても頼もしかった。
 試合はといえば、ACL優勝の余韻を引きずる、お疲れレッズが、このところ4連勝中と好調のエスパルスに足元をすくわれやしないかという僕の安直な期待に反して、序盤からレッズのペースで進む。いや、やっぱ疲れていてもレッズは強いじゃないか、こりゃエスパルス駄目かという感じだった。
 ところが前半10分過ぎに、空中戦の競りあいで肘打ちをくらった鈴木啓太が、目の上あたりを切って派手に流血。そのまま途中交替で早々とピッチを離れてしまう。
 これで試合のペースががらりと変わった。それまでのレッズの押せ押せのムードは息をひそめ、ここから先、エスパルスがボールを持てるようになった。たった一人の守備的な選手の交替で、こうもわかりやすく試合の流れが変わるとは思ってもみなかった。鈴木啓太って、じつはすごい重要な選手かもしれない。
 なんにしろ、この交替を機に試合は膠着状態に入り、結局は最後まで膠着したままという感じだった。なんたって失点の少なさではJ1で1位と2位との戦いだけあって、最後まで徹底的に守り抜きあっていた。野球にたとえれば、白熱した投手戦のような試合。地味ながらも緊迫感のあるゲームだった。
 さて、そんなわけでレッズが勝ち点1に終わり、裏ではガンバ大阪が不覚にもFC東京と引き分け。そしてわが鹿島アントラーズは1-0で(なんとか)レイソルを振り切って、勝ち点3をあげた。その結果、なんとアントラーズがガンバを追い抜いて、2位という予想外の展開に……。しかも次のレッズ戦に勝てば、勝ち点差1という僅差で最終節を迎えるという状況だ。いやあ、3位を死守とか言っていて、大変失礼しました。ここまできたらば、次の浦和戦にはぜひ勝って、最後までJリーグを盛りあげて欲しい。がんばれっ。
(Nov 18, 2007)

U-22日本0-0U-22サウジアラビア

オリンピック最終予選/2007年11月21日(水)/国立競技場/BS1

 いよいよこれが最後、オリンピック出場をかけた最終予選の最終戦。
 負けさえしなければ五輪出場が決まるというこの大一番のスタメンは、GK西川、DF青山直、水本、伊野波、2ボランチが青山敏と細貝、両サイドが水野と本田圭、トップ下が柏木で、2トップがベトナム戦と同じく李忠成と岡崎という組み合せ。反町さんが選んだフォーメーションは3-5-2だった。伊野波を使うならば3バックのほうがいいと思っていたので、この形に戻したのは納得だ。おかげで内田篤人の出番がなくなってしまうのは、アントラーズ・ファンとしては残念なんだけれども、まあチームの戦術だから仕方ない。
 ちょっとばかり感心したのは、細貝のボランチでの起用。前の試合で青山敏に代えて彼を途中出場させたときには、1点でも多く得点が欲しい場面で、なぜ守備的なポジションの選手を入れ替えるのかと疑問に思ったものだけれど、実はあの選手交替がこの試合への伏線で、細貝に試合勘を持たせるためのものだったとしたら、それはそれでたいしたものだと思った。真相がどうなのかはわからないけれど。
 なんにしろ、背番号2の細貝をボランチで使うということは、攻撃よりも守備を重視するという姿勢の表れだろう。引き分けでも五輪出場が決まるんだから、それもまあ当然。なんたってこのチームは、水本を中心とした3バックの時には、これまでに2失点しか許していないのだから。その2失点にしても、黒星をつけられたカタール戦でのもので、1点目はセットプレーからだったし──得点した選手のヒールキックがあっぱれだった──、2点目は伊野波の不運なハンドからのPKだった。つまり流れからは1点も許していない。得点力はないけれど、守備力は抜群──それが今回の五輪代表だった。
 ということでこの試合もそんなチームらしく、無得点のまま、失点も許さず、スコアレス・ドローで五輪への切符を手にすることになる。
 それにしても前半は、サウジが思いのほか果敢に攻めてきたので、やたらとひやひやさせられた。なんたってあちらは勝たないと五輪に出場できないというので必死だ。こちらはあわやというピンチの連続を、なんとか紙一重でしのいでいる感じだった。マイ・ボールは思うようにつながらないし、もういつ失点するんだか、不安でしょうがなかった。GK西川が横っとびで防いだこぼれ球が相手に渡り、そこからのシュートを青山敏がゴールマウス寸前で体にあてて止めるなんてシーンもあったし、30分すぎくらいまでは、ほんと大変だった。
 その場面のみならず、この日は青山敏がとてもよかったと思う。中盤の汗かき役として、かなりの存在感を放っていた。ようやく代表に復帰したGK西川、あいかわらず運動量豊富な柏木とともに、この日の試合でもっとも好印象を受けたうちのひとりだった。まあ、基本的には不満をおぼえた選手なんて、ひとりもいないんだけれども。
 そのほかで印象的だったのは、前半のロスタイムに李忠成がペナルティ・エリアで相手DFと競りあって倒された場面。倒されたといってもPKがもらえるようなプレーではなかった。でも、世の中にはそんなことにお構いなくPKをアピールするFWが多い。李は一瞬もそんなもの欲しげな素振りは微塵もみせず、すっと立ち上がると、すぐに自陣へ駆け戻っていった。なんだかとてもすがすがしくて、好印象だった。オリンピックを目指す選手はこうでなきゃいけない。ちょっと彼のことが好きになった。
 後半になると、ようやく日本の攻撃にもリズムが出てきた。うん、後半に関しては何度も決定機を作り出していたので、それなりに満足のゆく出来だったと思う。ただ、決まって当然というような決定的なチャンスが決まらない。あまりに決まらないので、もしかしてこのチームにたりないのは決定力ではなく、運かもしれないとさえ思ってしまった。ほんと、不思議なくらい、ゴールが遠かった。
 なんにしろ後半は終始、日本が押していた。それでもサウジも勝たなきゃならないので、たまには攻めてくる。攻められると、カタール戦でロスタイムの残り30秒でPKをとられた記憶がよみがえる。なんといってもA代表のアジアカップ連覇を阻んだのはこの国だったりするし……。おかげさまで、残り時間が少なくなって、これはスコアレス・ドローだなあという雰囲気が濃厚になってからは、非常にスリリングな気分を味わわせてもらった。まあ、こういう形での勝ち抜けもありだろう。
 とにかく、無事に出場が決まって、心からほっとした。試合終了のホイッスルとともに膝をついて、祈るような姿勢で泣き出した水本を見たときには、思いがけず、こちらまで涙を誘われてしまった。オシムのこともあるし、最終予選のあいだ、ずっとキャプテンマークを任されていた彼が感じていた重圧は、さぞや大きなものだったんだろう。結果を出せて、本当によかった。
 さあ、これで次は本戦だ。いまみたいな守備力だけのサッカーをしていたのでは、よくても勝ち点3で終わってしまう。もっともっと点の取れるチームに成長して、本番では世界をあっといわせて欲しい。期待してます。
(Nov 21, 2007)

浦和レッズ0-1鹿島アントラーズ

J1・第33節/2007年11月24日(土)/埼玉スタジアム2002/NHK

 残り2節を残して思いがけず実現した、1位レッズと2位アントラーズ(なんと!)の直接対決。
 アントラーズの先発は、GK曽ヶ端、4バックが内田、岩政、大岩、新井場、MF青木、小笠原、本山、野沢、FWマルキーニョス、田代というメンバー構成。現時点でのベスト・メンバーといっていいだろう。
 対するレッズは、前節・清水戦では出場停止だったワシントンが戻ってきたので、ポンテと長谷部をおのおの本来のポジションに戻し、阿部を最終ラインにまわして、ネネを下げてきた。つまりワシントンとネネを入れ替えて、フォーメーションをシフトした以外は前節と同じ。
 試合はいきなり、勝たない限り優勝の可能性がない鹿島が、序盤からガンガンと攻めて出る。この予想外に攻撃的な姿勢には、ちょっと驚いた。勢いあまったパスミスもそれなりにあったけれど、つながった時には果敢に攻めてゆき、遠めでも積極的にシュートで終わる。そういうプレーがチーム全体で徹底されていて、非常にいい入り方だった。
 そうそう、雰囲気的には、3日前に観た五輪代表のサウジ戦、あれに近かった。まあ、レッズが日本で、アントラーズがサウジと、そういう{たと}えになってしまうんで、ちょっとなんだけれども。なんにしろ、ディフェンスの堅いチームを相手に、あとがないアウェイ側が積極的にボールをつないでゴールを目指すと、そういう展開だった。
 まあ、ただそういう展開ながら、これまた五輪代表の試合と同じで、相手の守備力が高いものだから、攻めてはいても、なかなかゴールをこじ開けられない。そのうちに序盤の攻勢もひと段落という感じになり、前半はどうやらスコアレスのまま終わりそうだなと、そんな雰囲気が濃厚になった40分すぎに、なんと新井場が前半2枚目のイエローをもらって退場になってしまう。
 この日の主審は今年からスペシャル・レフェリーになったという扇谷という人だったのだけれど、この人の判定がどうにもよくなかった。フォールの基準が曖昧というか、イエローの出し方に過敏すぎるというか。新井場の1枚目ってのは、おそらく判定への異議申し立てが理由だったんだろうけれど、なぜイエローなのかわからないような場面だったし、2枚目にしたって、ハイボールへの競り合いで相手に肘が入ってしまったのは確かだけれど、そんなに激しく当たったわけではないし、故意だとも思えなかった。どちらにせよ、こんな大事な試合でわざわざイエローカードを切らなくてもいいじゃんと思うような判定だった。
 なにはともあれ、この退場により、試合の流れは大きく変わった。ひとり少なくなったアントラーズは、それまでのような攻撃的なサッカーを諦めざるを得なくなり、守備重視のカウンター・サッカーに切り替えることを余儀なくされた。いっぽうのレッズも、相手が引いてしまったことで、普段のような堅守速攻のスタイルを生かせなくなり、有利になるどころか、逆に攻めあぐんでしまう結果になった。このへんの勝負のあやは非常におもしろい。
 おもしろいといえば、後半に入ってからオリヴェイラ監督がふるった采配もおもしろかった。普通ならばDFが退場してしまった場合は、攻撃の駒を削って、DFを投入するのが定番だ。でもアントラーズにとってこの試合は、勝たないと意味がない試合だった。それなのに現状は、前半が終わってスコアレスのままで、相手よりひとり少ない状況。しかもその相手というのが、リーグ屈指の守備力を誇るチームだとくる。このまま選手交替をして、守備的な選手を入れても、勝利はおぼつかない。そもそもこの日のアントラーズは攻撃重視のあまりか、DFをひとりもサブに入れていなかった(この時点でかなりすごい)。
 そこでオリヴェイラ氏は交替枠を使わず、前半のまんまのメンバーを後半も送り出してきた。攻撃力を考えれば、いまのメンバーのままが最善だという判断はわかる。でも、それじゃあ新井場が抜けた穴をどうする?
 その答えがなんと、本山の左サイドバックへの緊急コンバートだった。普通あり得ないでしょう、本山の左サイドバック。本人も生まれて初めてだと言っていた。確かに今年の本山は非常に高い守備意識を見せてはいるけれど(持ち前の素直さでオシムに感化されたに違いない)、かといって特別ディフェンスが上手いとは思えない。そんな彼を左SBで使うのは非常に大きな賭けだ。実際にレッズはそこが弱点とみるや、何度もそのサイドから大きなチャンスを作るようになった。まったく危ないったらありゃしない。
 でもね。そんなオリヴェイラの大胆な采配が、ものの見事にチームに勝利をもたらすことになるんだから、やっぱりサッカーはおもしろい。
 後半唯一といってもよさそうなチャンスから生まれたアントラーズの決勝点は、そんなわけで左サイドの深い位置でプレーしていた本山が起点になったものだった。本山のスルーパスが2トップを経由して、ゴール左のスペースへ走りこんだ野沢に渡る。野沢はそれをノートラップで、見事、逆サイドのゴールネットに突き刺してみせた。相手のお株を奪うような綺麗なカウンターだった。いやはや、素晴らしい。
 さあ、待望の先制点は入った。こうなれば、あとはもう守り切るだけだ。当然のごとく、オリヴェイラはさっさと行動に出て、得点の5分後には、殊勲の野沢と田代を下げ、船山と中後を投入する。さらに残り5分を切ってからは、内田篤人を増田と交代させてきた(増田くん、ひさしぶり)。なんだか終盤の布陣はボランチだらけで、誰がどこを守っているんだかわからないオシム・ジャパン状態。こういうのが最近のトレンドなんだろうか。
 とにかく後半は、得点の場面以外は、ただひたすら耐えるのみという感じだった。レッズが故障明けの小野伸二を入れてきてからは、なおさら劣勢になった。伸二はなかなかいいプレーをしていたし、彼には去年だか一昨年{おととし}、さんざんやられた記憶があるので、いつ同点にされるか気が気じゃなかった。それでも曽ヶ端や大岩、岩政のセンターバック・コンビのふんばりもあり、なんとかレッズを完封、6万人のレッズ・サポーターのため息を誘うことになった。いや~、しびれる試合だった。
 ロスタイムには、船山がスローインの際に客席に向けて唾を吐いたという理由で、一発レッドをもらって退場になるなんて余計な場面もあったけれど──本人はそんなつもりはなかったと言っているので信じたい──、まあ、おかげでわずか9人でホームのレッズを破ったという妙な勲章も手に入れることになったし、なんともはや、見ごたえのある一戦だった。
 さあ、これでJ1も残すはあと1節のみ。でもって首位レッズとアントラーズの勝ち点の差はわずか1。次節のレッズの対戦相手が横浜FCだというのを考えると、アントラーズの逆転優勝はかなり難しそうだけれど、それでも1ヶ月前には、こんな状況になることなんて想像できなかったし、それを考えれば、まだまだチャンスはありそうな気がする。いざ、次週決着。
(Nov 25, 2007)