2006年10月のサッカー

Index

  1. 10/04 ● 日本0-1ガーナ
  2. 10/11 ○ インド0-3日本 (アジアカップ・最終予選)
  3. 10/14 ● 鹿島0-4千葉 (J1第27節)
  4. 10/21 ● 横浜M2-1鹿島 (J1第28節)
  5. 10/21   浦和2-2川崎 (J1第28節)

日本0-1ガーナ

2006年10月4日(水)/日産スタジアム/TBS

 直前のリーグ戦で坪井と闘莉王が負傷、おまけにちょっと前に加地も負傷で、それでなくても少ないDF陣はほぼ全滅状態。強制的に新しい布陣を試さざるを得なくなったオシムさん、いったい誰を招集するのかと思ったらば、阿部に加えてジェフの水本、そして今野を最終ラインに配置しての3バックときた。そこまで日本のセンターバックは使えないと思っているのだろうか。どうにもよくわからない。
 そもそも水本のほかにも攻撃的MFにはジェフの山岸をスタメン起用した上に、最初の選手交替が羽生だったりする。羽生が入った時点でフィールドプレーヤーのうち、半数がジェフの選手だ。どうにもジェフ贔屓の感が強すぎて、正直おもしろくなかった。
 でもその羽生の投入をきっかけとして、後半が半分過ぎたあたりから、ばたばたと選手が入れ替わる。播戸、我那覇、中村憲剛、長谷部、そして二川。見たいと思っていた選手を次々と使ってもらえたことで、途中からはジェフ偏重に対する不満もすっかり忘れて、夢中で試合のゆくえを追っていた。
 それにしても噂には聞いていたけれど、中村憲剛がいい。縦へと積極的なスルーパスを連発するプレーにはとても好印象を受けた。彼のプレーはもっと長いこと見てみたかった。今度、フロンターレの試合を一度ちゃんとチェックしてみよう。
 話が前後するけれど、この試合のスタメンはGK川口に、DFは前述の3人、中盤が駒野、啓太、アレックス、遠藤、山岸、そして巻と佐藤寿人の2トップという布陣だった。ちなみに佐藤寿人にとってはこれが代表での初スタメンだそうだ。それはちょっと意外。
 それにしてもこうして見ると、フィールドプレーヤーのうち、FWの二人をのぞいたそのほか全員が、ディフェンダーかボランチの経験者だ。こうした人選に、オシムのまず守備ありきという方針が見てとれる。基本的な選考基準は、キックが正確であること、ボール奪取力に優れていること、90分コンスタントなプレーができること、そしてこれらのうち複数を備えていることなんじゃないかと思う。
 とにかく基本的に守備的MFの集まりのようなチームなので、実際に試合を見ていても、ポジションがとても流動的で、誰がどこにいるか、よくわからない。それでいて全員が全員、ニアボールの時にはきちんとプレスにゆくという姿勢で一貫している。フォローがしっかりしているから、あまり危険なシーンは作られない。なので、得点力不足はあいかわらずの問題ではあるけれど、守備面ではかなりいい試合ができていると思う。しかも引いて守って、という消極的な姿勢ではなく、常に前から奪いにゆくという積極的なディフェンスが効いている。その点はとてもいい。急造の3バック、しかもプロパーなディフェンダーは水本だけ──この子はまだ21歳──という布陣でワールドカップ決勝トーナメントに進出したチーム相手に1失点なのだから、まあ及第点だろう。
 ガーナに失点を許した場面は、ちょっと相手が見事すぎた。ペナルティエリア左側から高速クロスを入れられ、それにずばっとあわされたもので、あまりのスピードに僕にはシュートが見えなかった。ガーナは全体的なボールコントロールという点ではかなり雑な印象だったけれど、ここという瞬間のスピードが半端じゃなかった。何度、なんだそりゃと驚かされたことか。あの瞬発力はちょっと真似しても身につくものじゃない気がする。
 なんにしろ代表初キャップの選手が、播戸、中村憲剛、山岸、水本の4人、さらに初スタメンが佐藤寿人に今野と、いままでとは違った選手のプレーが見られたおかげで、新しいものの日本人のひとりとしては、負けはしたけれど、なかなか悪くないゲームだったと思っている。
(Oct 04, 2006)

インド0-3日本

アジアカップ最終予選/2006年10月11日(水)/インド・バンガロール/フジテレビ

 この試合、届いたばかりの新しいノートPCのセットアップに気をとられていたせいで、ほとんどまともに見られなかった。代表の試合をきちんと集中して見なかったのなんて何年ぶりだろう。先週の日産スタジアムの試合でチケットがあまっていたり、視聴率が低迷していたりするというので、巷では日本代表の人気に陰り、なんて記事が出たりもしている昨今だ。自分までその風潮に乗ってしまったようでちょっと心苦しい。でも目の前にある新品のPCを無視して、アジアカップ予選の消化試合である格下インド戦に集中するってのは、ちょっと難しかった。とりあえず反省。
 ということで内容については語れないので、今回は記録を残すのみ。スタメンは川口、水本、阿部、今野、駒野、鈴木啓太、中村憲剛、アレックス、山岸、播戸、巻というメンバー。病気のためベンチを外れた遠藤に替わり、中村憲剛が初のスタメン出場を果たした。また前節でアグレッシブなプレーを見せた播戸も初スタメン。あとは前の試合と同じだけれど、フォーメーションは前回の3バックにアレックスを加えた4バックだったみたいだ──きちんと見ていない僕にはどういう形かはいまひとつわからない。前半の終わり頃に水本が怪我をして退場してからは、鈴木啓太が最終ラインに入っていた。途中交替で出場したのは、長谷部、佐藤寿人、我那覇の三人。
 試合は前半に播戸の足と頭で2ゴール、後半に憲剛のミドルが決まって計3得点と、初スタメンの二人の活躍で勝利した。インドが思っていたより上手くなっていたというのもあるけれど、それでもランクの差を考えれば、もう少し得点できても良かったのではないかと思う。やはり得点力不足はいまだに解消されていない感じだ。
 それにしてもピッチはでこぼこ、試合途中で一部の照明が消えてしまったり、試合終了間際にはピッチに犬が乱入したりと、いかにもサッカー後進国らしい、トラブルだらけの一戦だった。インドは2年前のW杯予選の時にも停電を起こしている。最近は電子大国化が伝えられているけれど、電気も満足に配給できないのでは、その肩書きもあまりあてにならない気がしてしまう。
(Oct 14, 2006)

鹿島アントラーズ0-4ジェフ千葉

J1第27節/2006年10月14日(土)/BS1(録画)

 用事があってテレビの生放送が見られなかったため、録画しておいて、翌日に朝刊で結果を知る前に見たのだけれど……。これが、見ているこちらは二日酔いで頭痛ガンガンだし、アントラーズも最悪の負けっぷりで、踏んだりけったりの試合だった。こんなことならば、わざわざつらい思いをして、頭痛を我慢してまで見なけりゃよかった──ってまあ、性格的にそういうわけにはいかないんだけれど。
 アントラーズの布陣は、GK曽ヶ端、4バックは新井場を右サイドに持ってきて、左にはファビオ・サントスを起用、中の二枚が岩政、青木。中盤は中後、増田、野沢、そしてようやく怪我から復帰した本山。2トップはダ・シルバとアレックス・ミネイロ。形だけはいつもどおりの4-4-2だったけれど、メンツはかなりイレギュラーな印象だ。
 なんでも対戦相手が3週間後にナビスコカップ決勝で対戦するジェフということで、この日はその試合のシミュレーションを目的としていたのだそうだ。そのためアウトゥオリは、その試合に累積警告で出られないフェルナンドを外し、ベンチにも入れなかった。内田篤人もその時期にユース代表に招集されているということで、ベンチ入りこそしていたけれど、この試合は欠場。柳沢に関してはよくわからないけれど、こういう試合で使われないということは、かなりレギュラーのポジションが怪しくなっているのだろう。
 それにしてもこれだけスタメンをいじってしまうと、さすがにジェフのようなチームと対戦するのはきつい。なんたってフィールド・プレーヤーのうちの半分が、慣れないポジションを強いられている。本来のポジションにいる選手だって、本山は故障明け、中後はどう考えたって経験不足、アレックス・ミネイロは2ヶ月ノーゴールというありさまだ。こんなチーム状態で、日本代表6人を要するいまのジェフに勝とうってのが甘い。案の定、ものの見事にやられてしまった。
 千葉は阿部勇樹のハットトリックに山岸のゴールと代表勢の活躍で計4失点。こちらはアレックス・ミネイロのゴールが途中出場した柳沢のオフサイドの判定で取り消される惜しい場面などもありはしたものの、結局ノーゴール。もうこてんぱん。今年の鹿島は強豪相手に負ける時は、こういう風に大差でころっと負けてしまう。かつてのしぶとさが感じられないのがおおいに不満だ。この日、来日してゲストで観戦していたレオナルドも、かつての所属チームの不甲斐ない戦いぶりに失望していたようだ。当然だよなぁ……。
 とにかくこれで首位浦和との勝ち点差はついに15。さすがにもう優勝の可能性を考えるのもおこがましいという状況になってしまった。そもそも、このところゴール面で貢献度の高いフェルナンドを、この試合ではベンチにさえ入れなかったという時点で、アウトゥオリは初めからリーグ戦は諦めていたということなのだと思う。まだわずかながら可能性が残っていないわけではなかったのに……。そう思うとなんとも釈然としない気分にさせられる完敗だった。ジーコ譲りの最後まで諦めないファイティング・スピリッツはどこにいってしまったのやら。
(Oct 17, 2006)

横浜F・マリノス2-1鹿島アントラーズ

J1第28節/2006年10月21日(土)/日産スタジアム/BS1

 シーズンも押し迫ったこの時期に、この強豪(古豪?)どうしが優勝争いとはぜんぜん関係のないところで戦っているというのは、ファンとしては残念なところだ。でもなあ。この試合のアントラーズのパフォーマンスを見てしまうと、今年はやはり仕方がないかなと思ってしまう。
 アントラーズのスタメンは曽ヶ端、名良橋、岩政、青木、ファビオ・サントス、増田、フェルナンド、野沢、深井、アレックス・ミネイロ、本山。なぜだか知らないけれど、内田篤人が不在で、新井場はベンチ。右サイドに入ったのは、今季初スタメンの名良橋だった。しかしこの名良橋が……。
 今年で34歳とすっかりベテランの彼も、やはり出場機会が少ないため──ここまでわずか途中出場2試合──実戦感覚がたりないのか、まるで存在感がなかった。アントラーズが許した2失点がともに右サイドのクロスからだったのを考えると、やはりこの試合のキーを握っていたのは彼だと思えてしまう。まあ敗戦は彼一人の責任ではないから、特に責めるつもりはないけれど。
 一番の問題はやはり守備力だ。特に2点のビハインドから1点を追いあげて、さあ追撃という時間帯にふたたび、2点目を奪われた場面とまったく同じような場面が繰り返されたのにはあきれた。右サイド深くまで切り込まれ、マイナスのパスを出されて、そこから中盤の選手がミドルシュートという形。最初の山瀬とは違い、その場面では上野がシュートをふかしてくれたから助かったけれど、なんだよ、ぜんぜん修正できていないじゃないかと、暗澹たる気分になった。1失点目の坂田のヘディングだって、あんな風にDFがほとんど競りあいもせずに決められていいプレーではなかったと思う。とにかく今シーズンは失点の形が悪すぎる。あんな風に前半途中までに2失点しているようじゃ、勝てなくて当然という気がしてしまう。
 できる限り攻撃的な形で戦いたいというのがアウトゥオリの方針なのかもしれないけれど、僕はやっぱり青木のセンターバックでの起用、増田のボランチでの起用には反対だ。二人とも本来のポジションの方が存在感があると思う。あとファビオ・サントスの起用も疑問。彼が嫌いなわけではないけれど、少なくても助っ人という言葉にふさわしいほどのプレーヤーだとは思えない。どうせ使うならば、経験の浅いブラジル人よりも、日本人選手にチャンスをあげて欲しいと思うのは、日本人として当然のことだ。アウトゥオリという世界的に有名な人を監督に招聘してしまったせいで、日本人を優先して使ってくれという、チームとしてはまっとうな要求が出せなくなってしまっているんじゃないかという気がする。
 この日の唯一の得点は本山のシュートが相手DFにあたってゴール前の狭いスペースに入り込んでいた深井のもとに跳ね返ってきて、それを深井が不恰好ながらしぶとく決めたもの。復帰第二戦目となる本山は、攻撃面では積極的に動いていて、それなりに好感が持てた。深井はゴールは素晴らしかったけれど、それ以外のプレーではやや存在感を欠いていたかなと。彼の場合は試合により出来にムラがある点でまだまだな気がする。いずれにせよ彼らのみならず、全体的なパフォーマンスは低かったと思う。
 岡田さんがシーズン途中で辞任して、現在は水沼さんが監督をつとめる横浜は、途中出場の選手が、マルケス、吉田孝行、奥という顔ぶれのところに、苦しいチーム事情と選手層の厚さの両方が見てとれる気がした。
(Oct 22, 2006)

浦和レッズ2-2川崎フロンターレ

J1第28節/2006年10月21日(土)/埼玉スタジアム2002/NHK

 日本代表での中村憲剛のパフォーマンスに感心して、一度はきちんとJリーグでの彼のプレーをチェックしておかないとなと思っていたら、ちょうどいいタイミングで首位を走る浦和と、三位でそれを追う川崎の直接対決があった。好カードということもあってNHK総合での全国放送だ。Jリーグファンとしては、これは見ておかないとならないだろう。ということで横浜-鹿島戦に引き続き、こちらの試合もテレビ観戦することになった。
 一日にJリーグの試合をふたつ続けて観るのもひさしぶりならば、アントラーズ以外のチームの試合をじっくりと観るのもひさしぶりだ。しかしながら、それがご贔屓アントラーズの試合よりも格段におもしろいんだから、まいってしまう。浦和-川崎戦がこれほどのコンテンツを誇るたあ、時代も変わったものだ。
 それにしても埼玉スタジアムの応援のすごいこと。一角だけフロンターレのチームカラーである水色のブロックがあったけれど、それ以外はスタジアム中、真っ赤っか。そんな満員のサポーターたちが休みなく身体を揺らしながら、声援を張りあげたり、歌を歌ったりしている風景は、なんともすさまじかった。あの熱気は、ワールドカップの熱狂になんら劣らない。そういう応援が国内リーグの普通の試合で見られるというのは、なかなか幸福なことだと思う。レッズ・サポーターおそるべし。これじゃあ、レッズがホームで負けないはずだ。
 とにかくそんなサポーターに後押しされたレッズは小憎らしいくらい強かった。この試合のスタメンには小野も長谷部も坪井もいない(小野だけは途中出場)。それなのにぜんぜん彼らの不在を感じさせないんだから嫌になる。判官びいきの日本人気質をたっぷりと持っている僕は、いまのレッズが憎たらしくてしかたない。もとより川崎のサッカーへの関心から見ようと思った試合だったし、首位レッズが強いのは当然だと思っているから、どうしても川崎びいきになってしまった。
 川崎を応援する理由はもうひとつある。指揮をとっているのが、元アントラーズでコーチをつとめていた関塚さんだからだ。昨シーズン、トニーニョ・セレーゾが鹿島の監督を退任したあと、最初に時期監督の候補となったのが、なにを隠そう、この関塚さんだった。ところが彼は古巣からのオファーをきっぱりと断わっている。この試合を見てしまうと、関塚監督が断わったわけもよくわかる。これだけのサッカーができるチームを任されていれば、そう簡単にそこを離れようという気にはなれないだろう。そういう意味では、今シーズンの鹿島は、関塚さんにオファーを断わられたという時点で、シーズンが始まる前から川崎に負けていたのかもしれない。
 試合はといえば、先制したのはホームのレッズ。得点王ランキングでトップを走るワシントンのあまりに見事なゴールだった。もうトラップから相手DFをかわしてシュートを打つまでのプレーが、まさにストライカーのお手本となるような完璧さ。この人は本当に素晴らしいストライカーだ。いまのレッズの強さは、こういう選手をきちんと補強で獲得するフロントの姿勢にも支えられているんだろう。それと比べると、小笠原が抜けた穴をいままでレギュラー・ポジションさえ獲得できないでいた野沢で埋めようとしているアントラーズって……。って、ここでそんな愚痴を書いていてもしかたないからやめる。
 とにかく、ただでさえすごいムードのスタジアムでホームの先制点。これで試合の行方はほぼレッズのものかと思ったら、そこがいまの川崎の違うところだ。PKを獲得して、前半のうちにきっちりと同点に追いつく。そして後半の早い時間に中村憲剛のヘディングゴールでもって勝ち越してしまう。川崎ではこの中村のみならず、彼とコンビでボランチをつとめるU-21の谷口も大きな注目を集めていた。さらに中村のゴールのお膳立てをした右サイドウィングの森勇介の攻守にわたる貢献度の高さも印象的だった。
 これでいったんは川崎リードとなったのだけれど、そこはさすがにレッズ。そのわずか数分後に同点に追いついてしまう。このところ絶好調と報じられている山田のスルーパスにポンテが反応。マークについた選手と上手く身体を入れ替え、さくっとゴールをあげてみせた。ポンテはすごくパスセンスのある選手だと思っていたけれど、あんなストライカー並みの技巧的なシュートも打てるとは……。浦和の外国人二人のシュートはどちらも素晴らしかった。いやはや、お手上げだ。
 結局このゴールでこの日は打ち止めとなったのだけれど、その後も決して試合はだれることなく、最後まで白熱した攻防が繰りひろげられた。全体的な実力のうえではレッズ有利だったかもしれないけれど、時間帯によってはちゃんとフロンターレが押していたし、いやはや、本当におもしろい試合だった。最近は日本代表でもアントラーズでも満足のいく試合を見せてもらっていなかったので、ひさしぶりにサッカーのおもしろさを堪能させてもらった気がする。嬉しいような、悲しいような……。
(Oct 22, 2006)