2003年10月のサッカー

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  1. 10/08 ○ チュニジア0-1日本
  2. 10/11 △ ルーマニア1-1日本
  3. 10/17 ○ 鹿島2-0清水 (J1・2ndステージ第10節)
  4. 10/25 ● 神戸2-1鹿島 (J1・2ndステージ第11節)

チュニジア0-1日本

2003年10月8日(水)/チュニス・エルマンザ競技場

 ようやく実現したジーコ・ジャパンの欧州遠征第一戦。ジーコがずっと海外遠征の必要性を主張してきたのを考えると、今頃になってようやく実現するというのはいい加減遅すぎる感がある。しかもヨーロッパに行ったはずが、初戦の対戦相手はアフリカ勢で、あまり強いとは言えないチュニジア。なんだかなあ。
 ま、とりあえず今回は遠征が実現しただけでも良しとしておくべきなんだろう。対戦相手にしたって、アウェーでいきなり強豪と当たってこてんぱんにやられるよりは、まずはこのくらいの相手とやっておくのが丁度いいかもしれない。それにチュニジアは去年のW杯グループリーグでの対戦国だ。現在の日本代表の実力を測る上ではそれほど悪くない相手だと言えなくもない。
 日本ではこの日がナビスコカップ準決勝の開催日にあたっていたため、その2試合に出場する磐田、鹿島、清水、浦和の選手は(基本的には)今回の遠征には招集されていない。加えて宮本も怪我で不参加。したがってここ数試合スタメンを務めてきた4バック、山田、坪井、宮本、アレックスの四人が、この試合には揃って出場できないことになった。おまけにそれ以前の4バックのメンバー、名良橋、秋田、森岡、服部の四人もナビスコ杯出場チームに所属している。つまりこの試合の4バックはジーコ・ジャパンでは全員初スタメンとなる選手だけで構成せざるを得ないという、非常に珍しい事態になった。
 この状況でジーコが選んだ新しい4バックは、加地(FC東京)、中澤、茂庭、三浦敦宏という構成だ。加地については名前も知らなかったし、アツが左サイドでプレーできるというのも知らなかった。不覚。
 茂庭のところは当初は松田が出場することになっていたのだけれど、その松田が直前になってまたもや腰痛で代表を辞退。どんな星の巡り合わせで彼はこんなにも代表と縁遠くなってしまっているんだろうと不思議に思う。間違いなく日本を代表するDFの一人なのだから、一日も早く代表に戻ってきて欲しい。
 A代表初選出となった茂庭は、手島の故障により急遽招集されてスタメンのチャンスを得た。鼻骨を骨折してW杯の時の宮本と同じマスクをしていたけれど、うっとうしかったらしくて途中で外していた。マスクのせいというわけでもないのだろうけれど、最初のうちはかなりミスも多くて、やっぱりまだA代表は早いんじゃないかという気もした。それでも、その後は落ち着いてプレーできるようになったみたいだ。なによりもさかんに声を出していたのには感心した。
 中澤は持ち前の強さを十分に発揮していたし、加地も結構攻撃参加して存在感を示していた。アツの攻め上がりが少なかったのが若干もの足りなかったけれど、全体的に新生4バックのメンバーは満足のできるプレーを見せてくれていた。
 この試合のチュニジアはW杯の時の印象とはまるで違って、思いのほかパス回しの上手いチームだった。チュニジアの監督はロジェ・ルメール。どこかで聞いた名前だと思ったら、なんだ、このあいだまでフランス代表監督だった人じゃないか。W杯で予選敗退してしまったので、たいした監督じゃないのかと思っていたけれど、チュニジアをここまで鍛え上げるんだから、実はいい監督なのかもしれない。
 なんにしろチュニジアの意外な強さ(もしくは日本代表の不安定さ)ゆえに、この試合の見せ場は守備にしかなかったような印象だった。ひさしぶりに顔をそろえた欧州組の、いわゆる「黄金の中盤」はなんだかいまひとつ連係が悪かったように思う。ツートップは柳沢と鈴木隆行で、この二人が揃った時はいつもこんな感じだよなあと思わせるプレーぶり。柳沢はあいかわらずオフサイドが多過ぎるし、攻撃にはまるで新鮮味がなかった。
 まあ、実をいうと早朝4時半から放送されたこの試合、録画に失敗して後半の途中までしか見られなかったのだった。だからその後、もしかしたら日本にもいい場面があったのかもしれない(少なくても途中出場した藤田のひさしぶりの代表でのプレーは見られなかった)。ただ一時間強を見た限りでは最近で一番出来の悪い試合だと思った。
 でもわからないもので、そういう試合に限って勝ててしまったりする。アウェーだというのにね。得点は茂庭からのロングフィードに反応してフリーのチャンスを得た柳沢が珍しく落ち着いて決めた一点のみ。それでも守備陣がきちんとした仕事をしてくれたので、なんとか白星を挙げることができた。うーん、白星を喜ぶべきか、不甲斐ない戦いぶりを嘆くべきか、なかなか判断に迷う試合だ。まあ、ラスト20分を見ていないことだし、つべこべ言うのはやめておく。
 ちなみに今回の4バックはおそらくこの試合限りだと思われる。実は土曜日のルーマニア戦のために山田、坪井、アレックスの三人がこれから合流することになっているのだった。わざわざナビスコカップ出場選手を呼び寄せるのは、それだけジーコがディフェンスラインの連係を高める必要性を強く感じていることの証しだろう。そして彼ら3人が日本代表のスタメンとして認知されていることの証しでもある。おそらくルーマニア戦はこの三人に中澤を加えた構成になるものと思われる。その他のディフェンダーたちが、今後このメンバーにいかに食い込んでゆくのかに注目したい。
 もう一つ注目なのがこの試合に起用されなかった選手の今後。小野にスタメンを奪われた遠藤はどうなるのか。完璧に一時の勢いを失ってしまった感のある大久保には再びチャンスがあるのか。楢崎と曽ガ端のどちらが正ゴールキーパーを務めるのか。ああ、こうして見ると日本代表にはまだまだたくさんの課題がある。
(Oct 09, 2003)

ルーマニア1-1日本

2003年10月11日(土)/ブカレスト・ディナモ競技場

 前の試合から中澤を残して、残りのディフェンス陣を総入れ替え。FWにも鈴木に替わって目の怪我で合流が遅れた高原を起用。楢崎がどこかを痛めたということでGKが川口だったのを除けば、おそらくジーコが考える現時点でのベスト・メンバーで臨んだ古豪ルーマニア戦。
 ジーコや選手の「ルーマニアは強い相手だから」云々というコメントを聞いてもまったくぴんと来ていなかったのだけれど、試合開始直後にアナウンサーの「いつもは黄色いユニフォームのルーマニアですが」という発言を聞いてようやく記憶がよみがえる。おーっ、その黄色のユニフォームはよく覚えている。あれだ、ルーマニアってのはハジがいた国じゃないか。ワールドカップの常連国じゃないか。そりゃ強いや。おみそれしました。それにしてもホームなのになぜ赤いユニフォームなんだ?
 まあ強いと言っても、今回の欧州選手権では予選敗退がほぼ確定ということで、チームは既に目標をドイツワールドカップに切り替えて、若手選手のテストを始めているらしい。そんな状態ならば日本にだって十分勝機はある。実際、この試合はかなりの時間、日本がボールを支配していた。たとえ若返り政策によって戦力的には不安定だとしても、経験値で大きく開きがあるヨーロッパのチーム相手に、アウェーでこれだけ戦えるようになったということを、なによりまず喜ばないといけないと思う。
 ただ、なんだかすっきりしない気分の試合だった。前半16分にピンチだとも思えなかった場面でいきなり先制を許したのがなにより問題だと思う。元パルマで中田の同僚だったムトゥに右サイドからドリブルで持ち込まれ、シュートを打たれる。マークについた坪井はなんなくかわされ、川口は左手にあてながらも止めきれずに先制ゴールを許してしまった。なんちゅーあっけない……。
 あそこまで詰めていてシュートを打たせてしまう坪井も、あれくらいのシュートを止められなかった川口にも大きな痛手となるプレーだった。この二試合の中澤の良さを考えると、次の試合で坪井がスタメンに名を連ねられるかどうかあやしい。逆に次の試合で中澤を外して坪井を起用するようだったらば、ジーコの手腕が問われてしまうだろう。川口にいたっては、現時点で楢崎、曽ヶ端に続く第三キーパーの位置付けなのだから、それであのプレーはかなり致命的だ。なまじ前の試合の急造守備陣がよくやっていただけに、代わって入った二人の凡プレー(と言っては可哀想かもしれないけれど)から先制点を失ったのはどうにも残念でならなかった。
 攻撃の面では柳沢、中田、小野という縦のラインがいい感じでボールに絡んでいた。逆に高原と俊輔はいまひとつ存在感が感じられなかった。稲本のプレーの良し悪しは僕にはあいかわらずわからない。
 なんにしろゲームをドローに持ち込んだのは、相手の隙をついてディフェンダーの裏へ走りこんだ柳沢への、中田の見事なラストパスだった。柳沢も落ち着いてこのチャンスをものにした。前の試合にしろこの試合にしろ、柳沢がこの遠征で放ったシュートはいつになくしっかりと枠へ飛んでいる。イタリアへ移籍した効果がありあり? この調子できちんと結果を出して、レギュラーの座を不動のものにして欲しいもんだ。
 この試合のあと、中田は「あいかわらずこのチームは声が出ていない。このままW杯予選に突入してしまったらば不安だ」という発言をしている。彼はこのところ、この手の発言に終始している印象がある。少なくてもテレビで見ている限りではディフェンダー、特にセンターバックの中澤や茂庭、今回は出場していないけれど、宮本などは非常によく声を出している印象があるのだけれど、チーム内部から全体を見るとそうでもないのだろう。特に前の方、俊輔や柳沢あたりはおとなしそうだし。
 ジーコに対して、決まりごとがなさ過ぎるという批判がある。最近は選手の中にもそのことに言及する人がいるという。でも裏を返せば、そういう環境っていうのは、プレーヤー個々がその気になりさえすれば、自分の好きなサッカーができる土壌があるってことだ。代表になるような選手ならば、若手だってもう十年以上サッカーをやっているような選手がざらだろう。それだけ長くサッカーをやっていれば、自分のやりたい理想のサッカーみたいなものはあるはずだ。今の代表はそうしたサッカーを実現するまたとないチャンスなんじゃないのか。だとすれば自らのヴィジョンを仲間たちと共有するべく、より密なコミュニケーションが必要になるのはあきらかだ。中田が「声が出ない」と嘆くというのは、そうしたジーコの方針に対して、自ら積極的に働きかけている選手が少ないということを意味するんだろう。そりゃ確かにやばい。
 「決まりごとがない」と嘆く行為は、結局そうした決まりごとを自ら主導でチームに生み出そうという積極性に欠けるだけのことに思える。マスコミがジーコの放任主義を批判するのはかまわない。しかし選ばれた選手がそれを批判するのは、自らのポテンシャルや自意識の低さを露呈するようなものだと思う。
 ただ、もとより日本という国自体が自己主張をしないことを良しとする風潮の国民性なのだから、彼らサッカー選手にばかりそうした積極性を求めるのは、やや難がある気もする。日本代表にそうした変化を望む以上、僕ら自身も変わらなければいけないということをしっかりと肝に銘じよう。そのうえで、日本代表に選ばれた選手たちが、そうした国民性という殻を破ってやろうという意欲を見せてくれることを祈ろう。
(Oct 13, 2003)

鹿島アントラーズ2-0清水エスパルス

J1・セカンド・ステージ第10節/2003年10月17日(土)/カシマスタジアム/BS1

 先週のナビスコカップ準決勝。宿敵ジュビロ磐田相手に出場停止の小笠原、名良橋、故障中のエウレル抜きでの戦いを強いられたトニーニョ・セレーゾは、窮余の策として、フォーメーションを3バックに変更してきた。内田、秋田、大岩を真中にして、両サイドには青木と石川を置き、ほとんど5バックという形を取ったらしい。ボランチはフェルナンドと本田の二枚、前は本山、平瀬、深井の、なんと3トップ。つまり形としては3-4-3、もしくは5-2-3という極めて異例の布陣を敷いたわけだ。僕は残念ながらこの試合を見ていないのだけれど(深夜放送を録画したにもかかわらず、見る時間が作れなかった)、どうやらこの新しい形が上手く機能したらしい。あの磐田を相手に2-0で勝利を収めて、見事決勝戦への進出を決めたのだから。
 トニーニョ・セレーゾはその勝利に余程よい感触を得たんだろう。この日のリーグ戦では小笠原と名良橋が戻って来たにもかかわらず、やはり同じ3バックの布陣で試合に臨んだ。ただし、まったく同じではなく、3バックの一角に名良橋が入り、3トップの部分は平瀬、本山の2トップに小笠原のトップ下、もしくは1トップにダブル司令塔という形にアレンジし直されていた(どちらだったかは不覚ながら集中力が足りなくて判断できなかった)。なんたって前節ではFC東京に5-1という屈辱的なスコアで負けている(ひどい試合だった)。磐田に通用した新しいフォーメーションを使わない手はないということだろう。
 実際ディフェンスに人数を裂いているだけあって、守備はそれなりに安定していたと思う。中盤の底にいる選手が多いため、攻撃の際にも攻め上がりに勢いがあった印象だった。なるほど悪くない。ある意味セレーゾが固執した3ボランチに近い形ではあるわけだし、手ごたえをつかんだのもわからなくない。しかしアントラーズまでがこういう形で3バックになってしまうと、日本代表で4バックに固執しているジーコの立場はどうなるんだと、ちょっとばかり余計なことが気になったりもした。
 それに、悪くなかったのは確かだけれど、かといってあまり手放しで誉められる内容でもなかった。前半には一瞬気が抜けたようなプレーが続いて、するするっとトゥットにペナルティエリアまでボールを持ち込まれ、大岩がこれを倒してPKを取られる場面があった。さいわいトゥットがPKを外してくれたから助かったものの、苦手の清水相手にあれが入っていたら、どうなっていたかわからない。
 スコアレスで突入した後半、25分が経過したあたりでセレーゾ監督が動いた。石川を下げて相馬を、本山のところには深井を投入する。さらに本田に替えて池内を入れ、彼をセンターバッグとして、名良橋を左サイドに移し、青木をボランチに戻した。
 この交替が効いた。残り15分を切った時間帯に清水の選手交替の隙をついて、見事な小笠原のゴールが決まる。左サイドで相馬が競り勝ったボールを深井がつなぎ、ゴールラインぎりぎりから思い切りのいいマイナスのパスをゴール前に蹴り込む。ゴール前にぽっかりと空いたスペースには小笠原がフリーで飛び込んでいた。文句なしの先制ゴール。オフサイド気味だったり、敵のミスがあったりというケチがつかないで、こんなに綺麗にゴールが決まるのを見たのはひさしぶりな気がする(まあ清水の側から見ればあそこにスペースを空けてしまったのは明らかなミスなのかもしれないけれど)。実にすかっとした。
 その後は、前がかりになって攻める清水の隙をついて攻めあがった相馬に、フェルナンドのスルーパスが通って2点目をゲット。これで勝負ありだった。そのまま相手を0点に抑え、アントラーズが実に6試合ぶりの勝利を手にした。そんなに勝ってなかったのか……。
 ロスタイムには、清水のアレックスがチームメイトに対する不可解なイエローカードに執拗に抗議したあげく、いっぺんに2枚のイエローカードをもらって退場するなんてハプニングがあった。確かに上川主審のジャッジはなってなかったと思うけれども、だからといって自分がレッドカードもらっちゃ仕方ないだろう。困ったもんだ。
(Oct 20, 2003)

ヴィッセル神戸2-1鹿島アントラーズ

J1・セカンド・ステージ第11節/2003年10月25日(土)/神戸総合運動公園ユニバー記念競技場/BS1

 本山がヘルニアの手術を受けて戦線離脱。いたた。この時期にそれはちょっと痛過ぎる。
 代わりとばかりに、ここしばらく姿を消していた野沢が復活してきたけれども、どれくらいできるかはわからない。しかもこの日の野沢のポジションはFW。ではMFに入ったのは誰かというと、それが深井。二人のポジションがなぜか逆転している。あまりにゴールを決められないせいで、トニーニョ・セレーゾは深井のことをFWだと考えるのをやめてしまったのかもしれない。
 フォーメーションは再び伝統の4バックに戻った。でも、結果負けてしまったのだから、それでよかったのかどうか……。攻撃力不足が深刻な状況を{かんが}みれば、守備に重きをおいた3バックの方がよかったようにも思う。
 神戸で注目すべきは、当然つい最近Jリーグに復帰したビスマルク。でも随分ぼってりした体形になってしまっていて、動きもやたらと緩慢に見えた。それでもカズの先制点につながるラストパスを出したあたりはさすがというべきなんだろうか。いいんだか、悪いんだか、いまひとつよくわからなかった。まあ、個人的にこの試合は、開始直前までPCのトラブルでどたばたしていたせいで、残念ながら集中して観ることができなかったから、いいも悪いもあったもんじゃないけれど。
 なにはともあれ、カズの先制ゴールはとても見事だった。右サイドからのビスマルクのパスをゴールに背を向けて受けて、そこから右足を軸に時計回りにターンして、左足でのシュートを、マークについた秋田の股抜きでゴール右隅に流し込んだ。虚を突くようなタイミングに、曽ヶ端も反応し切れなかった。あっぱれ。
 その後、播戸のゴールが決まって2-0。鹿島も途中出場の相馬がロスタイムぎりぎりに二試合連続ゴールで1点を返して意地を見せたものの、その直後にゲームセット。最下位争いをしている神戸に痛い一敗を喫した。この敗戦で順位は7位に後退したけれど、それでも首位との勝ち点差はわずか3だ。最後までしつこく食らいついてゆく執念を見せて欲しい。
(Nov 02, 2003)