2014年12月の本
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- 『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』 アガサ・クリスティー
なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
アガサ・クリスティー/田村隆一・訳/早川書房/Kindle版
クリスティーの作品のなかでも、もっともタイトルがキャッチーだと思う作品のひとつ。なぜだかよくわからないけれど、『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』というタイトルには、ぜひ読んでみたいと思わせるものがある。
──といいつつ、内容についてはすっかり忘れていて、再読してみたら『秘密機関』から連綿とつらなる男女カップルによる冒険スリラーだったので、あぁ、これもこの手の作品だったのかと、いまさらながら思ったりした。
物語は、見知らぬ男性の死亡事故を殺人事件ではないかと疑った貴族令嬢フランキーが、その事件の第一発見者であり、彼女の幼馴染である好男子ボビーをたきつけて事件の背後を探ってゆくうちに、事件に巻き込まれてゆくというもの。まさに同工異曲なクリスティー恋愛ミステリ劇場のうちの一編。
魅惑のタイトルは、崖から転落して死亡した男性が死に際に言い残したダイイング・メッセージで、真相が明かされてみると、崖から落ちて死にかけているときにそんなこと言い残すやつがいるかぁ? と思ってしまうような話なんだけれど、それでもその謎解き部分での会話の流れの持ってゆき方がとても上手いので、おぉ、そうかと、それなりにぐっときた。そこんところがミステリ作家クリスティーの手腕の冴えだと思う。
(Dec 27, 2014)