2006 FIFAワールドカップ Germany (2)

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Index of Group Leagues (2)

  1. イングランド2-0トリニダード・トバゴ
  2. アルゼンチン6-0セルビア・モンテネグロ
  3. オランダ2-1コートジボワール
  4. ポルトガル2-0イラン
  5. 日本0-0クロアチア
  6. ブラジル2-0オーストラリア
  7. スペイン3-1チュニジア

イングランド2-0トリニダード・トバゴ

グループB/2006年6月15日(木)/ニュルンベルク

 グループ・リーグも2戦目に突入。グループAではドイツとエクアドルが早々と決勝トーナメントへの進出を決めている。この日の最初の試合は、個人的な注目度ナンバーワン、イングランドの2度目の登場。
 イングランドの問題はFWにある。いくら中盤からうしろがパワフルかつ堅牢でも、さすがに前線があれくらい低調だと、そうそう楽には勝てない。右サイドバックだけを入れ替えたこの日の試合でも、オーウェンはどうしてそこまで切れがないのかと不思議になるくらいの逆ワンダーぶりだし、クラウチはあの身長がなければ、もしかしたら日本人なんじゃないかと思ってしまうような決定力のなさだった。ボランチとは思えないくらい積極的にシュートを打ちまくるランパードが一番目立っているようでは苦戦も当然だ。
 けれどもそんなイングランドの苦しい戦いも、残り7分でようやく報われる。ベッカムからのクロスを受けたクラウチの今大会初ゴールだ。173分目にしてようやくその198センチの身長のアドバンテージを発揮できた瞬間だった。
 さらに日本時間の深夜3時近くなり、累積した睡眠不足がもたらす過度の眠気に僕がうつらうつらしている間に、ジェラードがとどめのミドル・シュートを決めて試合を決定づける。そのままイングランドが逃げ切り、2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。
 初戦で下馬評の高いスウェーデンと引き分けて世間を驚かせたトリニダード・トバゴだったけれども、攻撃力はいまひとつのようで、2試合続けてのスコアレスに終わった。ボール支配率38%という数字が表すとおり、終始イングランドに支配されっ放し。特別書き残しておくこともない印象だった。
 そうそう、この試合レフェリーは上川さんだった。この大会での2試合目。とりあえず無難にこなせていたようだ(なにか失敗しやしないかとハラハラしてしまう自分は、いかにも典型的な日本人だなと思う)。コイントスの時にイングランドのキャプテン、ベッカムと握手するという役得もあったし、上川さんにとってはなかなかいい大会なんじゃないだろうか。
(Jun 16, 2006)

アルゼンチン6-0セルビア・モンテネグロ

グループC/2006年6月16日(金)/ゲルゼンキルヘン

 あまりに強すぎる。スペインにも感心させられたけれども、この日のアルゼンチンはちょっと規格外だった。
 意外なことにシュートの数はそう多くない。あれほどの大勝を見せられてしまったあとではとてもそうは思えないのだけれど、公式記録によるとこの試合のアルゼンチンが放ったシュートはわずか11本だ。
 しかしながら、そのうちの9本が枠に飛んでいて、なおかつそのうちの6本がゴールネットを揺らしているのだから恐れ入る。それも相手がアジアやアフリカの弱小国だというならばともかく、いくら調子を落としているとはいえ(加えて後半退場者を出したとは言え)、欧州予選をわずか1失点でしのぎきったセルビア・モンテネグロだ。あまりにすごさに感心し切ってしまって、歴史的大敗を喫したセルビア・モンテネグロに同情することもできなかった。
 特に圧巻だったのはその得点パターンのほとんどすべてが流れの中からであった点。FKを直接とか、CKに頭であわせて、とかいう現代サッカーで一番多い得点パターンは皆無だった。すべてがすべて、見事な連係によるゴール。リスタートからというパターンがひとつはあったけれども、それも途中出場のメッシ──マラドーナの再来との呼び声が高い脅威の18歳──がサイドを崩してきちんとクロスを入れて、ファーサイドに走りこんできたクレスポが足できれいにあわせたものだったりする。怪我をした選手に代わり途中出場した5番カンビアッソも華麗なパスワークに加わり、きっちりとフィニッシュに絡む。こんなに素晴らしいゴールばかりを1試合に6本もたたき出せるチームなんてこれまで見た記憶がない。本当にあきれるほどの強さだった。
 オーストラリアやクロアチアと戦うにあたって、相手の高さを脅威だという論調がとても目立った。それは確かにそうだろう。けれどもアルゼンチンを見れば、クレスポやリケルメこそ180を超えているけれど、サビオラもテベスもメッシも170センチ前後だ。驚いたことに3バックなんて、ひとりとして180センチを超えていない。キャプテンのソリンなんて173センチしかない。つまり日本人とほとんど変わらないわけだ。そういうチームが、高さで勝るセルビア・モンテネグロに対して、これほどのサッカーをできるという事実。そこには日本の進むべき道が明確に示されていると思う。現時点では遠い、遠い夢であろうとも。
 ビバ、アルゼンチン。ピクシーには悪いけれど、僕にとってこの試合は今大会のベスト・ゲームのひとつだった。
(Jun 17, 2006)

オランダ2-1コートジボワール

グループC/2006年6月16日(金)/シュツットガルト

 死のグループと呼ばれているグループCだけれども、始まってみれば、意外と序列がはっきりしていたみたいだ。結局この試合でオランダが勝ち、アルゼンチンと並んで早々と決勝トーナメント進出を決めてしまった。けれどもこの試合に関しては、オランダには勝者としての充実感はなかったんではないかと思う。
 最初の30分でオランダが2ゴールをあげた時こそ、こりゃあアルゼンチン戦に続いてこちらも強豪がその力を見せつけて終わるのかという雰囲気だった。先制点を叩き込んだ17番ファン・ペルシのFKは目を見張るほどの迫力だったし、初戦ではいまいちだったエースのファン・ニステルローイもストライカーらしさを発揮して大会初ゴールを決めていたし。こりゃ格が違うかなと思った。
 ところがそのあと、試合は思わぬ様相を呈する。前半も残り少なくなって、コートジボワールがようやく14番コネのミドルで1点返したところから、ゲームの流れは一気にコートジボワールへ。
 このチーム、下馬評の高さは伊達じゃなかったようだ。最初のうちこそエンジンのかかりが遅いのか、ドタバタした感じだったけれども、いざエンジンがかかってからは、ドログバを中心とした小気味よい攻撃でオランダを圧倒する勢いだった。
 特に個々の選手のボールキープ力の高さに感心した。長くてしなやかな足を伸ばして、すっとすくうようにボールを奪っては、的確なパスワークで相手ゴールへと襲いかかる。こぼれ球はほとんどすべてコートジボワールのものという感じで、後半45分にわたってほぼ休みなく繰りひろげられた波状攻撃は感動的でさえあった。ボール支配率はオランダが51%とやや上回っていたようだけれど、とてもそんな感じはしなかった。どちらかというとコートジボワールのファール15に対して、オランダのそれが24という数字の方がぴんとくる。とにかくその強豪らしからぬファールの多さがオランダの苦戦を如実に物語っていた。
 しかしそれでもコートジボワールにとっては、あと1点が遠かった。彼らの猛攻をしのいできちんとリードを守りきったオランダが、決勝トーナメント進出を決めた。このしたたかさはやはりサッカー強国ならではなのだろう。特別おもしろいサッカーを見せてくれたわけではないのだけれど、それでもオランダのサッカーには十分な実効性がある気がした。
 それにして本当にコートジボワールは惜しかった。オランダのファンから声援が飛んでいたという報道もあるけれど、さもありなん。実にあっぱれな戦いぶりだった。アルゼンチンとの初戦を見ておかなかったのは失敗だったかもしれないと、いまさらながら思わされた。本当にあっぱれ。
(Jun 17, 2006)

ポルトガル2-0イラン

グループD/2006年6月17日(土)/フランクフルト

 アジアではトップクラスの実力を持っているはずのイランも、世界標準からすると全然まだまだなようで──。この試合が始まった途端に、ああ、これはちょっとばかり力の差がありすぎるなと思わされずにはいられなかった。とにかくパス回しがばたばたしている。精度が低いというか、自信がないように見えるというか。とてもじゃないけれど、勝てそうな気がしない。
 しかもイランはトップフォームとはいえない状況。37歳にしていまだチームに君臨しているダエイは腰痛のためスタメンをはずれ、アジア最優秀選手に選ばれたカリミも、体調不良かなにか知らないけれど、まるで存在感がない。勝負はどれだけポルトガルの攻撃をしのげるかと、その間に訪れるだろうわずかのチャンスをいかにものにできるかにかかっているだろうと思われた。
 対するポルトガルも決していいようには見えない。初戦はフィーゴ(33歳だそうだ)のスピード豊かな突破から生まれた虎の子の1点を守りきっての勝利。この試合でもいまひとつ攻撃の歯車が噛みあっていないようで、圧倒的にゲームを支配しながらも、なかなか得点に到らない。前半はスコアレスで折り返した。
 後半もおなじような展開で試合はずるずると進んでゆく。このままゆけばイランにも勝機があるかと思われた後半18分、均衡を破ったのはやはりポルトガルだった。名波に似た雰囲気をもったブラジル出身の20番デコのミドルシュート。この一発で勝負の行方は決まったようなものだった。さらにその後、ポルトガルは残り10分となったところでPKを得て、これをクリスチアーノ・ロナウドが決めて追加点。勝利を決定づけた。
 イランはスコアレスのまま終わり、アジア勢では一番最初にグループ・リーグでの敗退が決まっってしまった。日本戦を翌日に控えて、幸先が悪いじゃないか。
 さて、ここまでほとんど波乱らしい波乱もなかったこの大会だけれど、このあとに行われたグループEだけはやや波乱含みの展開となっている。初出場のガーナが、初戦でアメリカに完勝したチェコに2-0で勝利するという番狂わせを演じ、さらにアメリカもイタリアを相手に、両チームあわせてレッドカード3枚が飛びかう死闘を繰りひろげ、1-1のドローに持ち込んだ。この結果、イタリアの1位に続き、得失点差で2位につけているのは、なんとガーナ。全チームに予選リーグ突破の可能性が残されているという、とてもスリリングな展開になっている。
 頑張ればガーナがチェコに勝てるのだから、日本代表がクロアチアに勝てないはずがない。グループFにも最終戦までもつれこむ熱戦をぜひ──。
(Jun 18, 2006)

日本0-0クロアチア

グループF/2006年6月18日(日)/ニュルンベルク

 クロアチアと引き分けたことで、グループリーグ突破はほぼ不可能という状況になった。オーストラリアに破れ、クロアチアから1点も奪えない日本が、王者ブラジルを相手に2点差をつけて勝てるとはとても思えない。
 けれどそんな絶望的な状況に陥ったにもかかわらず、なぜか気分はオーストラリアの時ほど、落ち込んではいない。本当にオーストラリア戦は、僕が見るようになって以来、日本サッカー史上最悪の負け方だった。あれにくらべたら、負けなかっただけで上出来だ。そんな風に思えてしまうこと自体が情けないことなのだけれども、少なくてもわずか1%であろうと、決勝トーナメント進出の可能性を残して第三戦にのぞめるというだけで、いまの代表ならばよしとしないといけない気になる。ジーコ監督の存在は発展途上にある日本にとってはとても大きなハンディだから……。次は王者の胸を借りて、おそらくこの大会最後となるだろう90分を心残りなく戦って欲しい。
 それにしてもこの日の試合を見てしまうと、どうしてジーコが最初からこの大会を4バックで挑む気になってくれなかったのかと、本当に恨めしく思える。もしも4バックで戦うつもりで、そのための準備をして、きちんとコンビネーションを高めていてくれたならばと。結局、僕は最後まで日本代表で見たいと思うサッカーを見せてもらえずに終わってしまった。できることをきちんとしてこなかったがゆえのこの結果だ。後悔の念なしに思い出すのは不可能な大会として、記憶に残ることはまず間違いない。そしてそれは過去の2度の大会と変わるところがない。この国のサッカー協会には、そして僕らには進歩という言葉がないみたいだ。
 なにはともあれ、小笠原を入れ、加地が復帰して、4バックでのぞんだクロアチア戦。川口がPKをとめる超ファインプレーをで日本を救ったにもかかわらず、結局攻撃陣がふるわず、スコアレスのまま両チームで勝ち点1を分けあって終わってしまった試合だった。
 復帰した加地は素晴らしかった。彼がオーストラリア戦に出られていればと思ってしまった。後半から福西に代わって出場した稲本もとても良かった。小笠原はいまひとつ。あれくらいのプレーしかできないとは思っていないので、ものたりなかった。俊輔は39度の熱があったとかいうことで、やはりいまひとつ。熱があったにしてはよくやっていたけれども、それでもキックの精度が命の選手だ。体調不十分では本来のプレーはのぞめない。本当に熱があったのならば、自己申告で出場は諦めて欲しかった。
 FWは全員そろって期待はずれ。高原はどこにいたかわからないし、柳沢は唯一で最大の決定機にむちゃくちゃなシュート・ミスをするし。あとの二人は途中出場なのに、運動量がたりない。あれくらいしか動かないならば、代わりに巻をつかって欲しかった。
 そういえば、不本意な結果にもかかわらずあまり悲愴感を覚えなかった原因には、随所に見られた滑稽なプレーのせいもあったかもしれない。柳沢のシュートミスを筆頭に、加地の川口へのバックパスがイレギュラーバウンドしてあやうくゴールに入りそうになったシーンとか、俊輔のFKがアレックスのお尻にあたってはずれたシーンとか。日本のカウンターのチャンスがレフェリーのナイスな守備で摘まれてしまったシーンとか。なんだかシリアスなはずの試合の随所に、脱力感をおぼえるような滑稽な場面がちらほらとある、変な試合だった。
 次の試合、日本はグループ最下位のまま、オーストラリアが勝たないことを願いつつ、ブラジルとの第三戦にのぞむ。
(Jun 19, 2006)

ブラジル2-0オーストラリア

グループF/2006年6月18日(日)/ミュンヘン

 初戦ではあまり評判が良くなかったブラジル。この試合でもチームとしての機能性という点ではやはりいまひとつという印象こそ受けたのだけれども……。しかしそんなことは現時点ではどうでもいいんじゃないかと思わせるポテンシャルの高さに舌を巻いた。
 この日のブラジルのすごさはファールがわずか9つという数字に表れていると思う。とにかくボールの奪い方が鮮やか過ぎる。それもボールの扱いの上手い選手が何人かいるという話ではない。本当にすべての選手が同じレベルで敵のボールを奪い取っているように見えた。こぼれ球への反応も素晴らしい。この人たちには潜在的にどこにボールが転がってくるかを予知する能力があるのではないかと思ってしまうくらい。時々おやっという危なっかしいプレーもあるにはあったけれども、それでも全体としては僕なんかが普段は目にすることのないような高みでのプレーが続いていた。さほど苦労もせずにナチュラルにディフェンスができてしまっている印象がある。アルゼンチンの有機的な連動性にも感動したけれども、ブラジルにはまた違った形での凄みがあった。こんなチームに2点差つけて勝てって……。それはまさにミッション・インポッシブルだ。
 弱点があるとするならば、噂に聞いたロナウドの動きの悪さだろうか。本当にあのぼてっとした体形はどうしたことだ。絶好のチャンスにシュートを空振りをする姿なんて、02年の時ならば考えられない。もしもいまのロナウドが1トップの布陣で来てくれたならば、もしかしたら失点しないで済むんじゃないかと思ってしまった。
 その一方、こちらも噂の新人ロビーニョ。この子はすごいや。日本戦は出場禁止だ。つかっちゃ駄目。彼はまずい。止められない。しかも彼のうしろにはいまや世界一と言われるまでに成長したロナウジーニョがいるんだから話にならない。
 やはり駄目。どういう角度から見てもこのチームには勝てる気がしない。こんなチームに勝てるようならば、最初からオーストラリアになんて負けていない。さすが優勝候補の最右翼。そのあきれるほどのポテンシャルの高さには、絶望的な気分にさせられた。
 いったい、このとんでもない国からやってきたジーコは、いったいどこを見て、いまの日本が世界に通用するなんて思ってしまったのだろう?
(Jun 20, 2006)

スペイン3-1チュニジア

グループH/2006年6月20日(月)/シュツットガルト(録画)

 初戦でウクライナを完膚なきまでにたたきのめしてみせたスペインだったけれども、この第二戦では格下のチュニジアに思いがけない苦戦を強いられる。一試合を通して、わずか4本のシュートしか打てなかったチュニジアに、そのうちの1本を開始8分で決められて先制を許すと、そのまま前半はビハインドのまま終了。圧倒的に試合は支配していたけれども、相手を崩し切ることができずに、攻め急いでミドルで終わる、みたいなシーンばかりだった。やっぱり若さが出ているのかなという気がした。
 結局後半もその展開のまま、ずるずると時間が過ぎてゆく。これはもしかしたらば、このままチュニジアの大番狂わせかと思い始めた頃。やはりそうは問屋が卸さない。後半も25分を過ぎて、ついに試合が動いた。スペインがようやく同点に追いつく。
 決めたのはこの日も後半からの出場となったラウルだった。3大会連続ゴールだそうだ。さすが頼りになる。同じように3大会連続出場のロナウドやオーウェンが今大会は不調をかこっているだけになおさら感心させられる。
 ラウルのゴールは味方のシュートのこぼれ球にきちんと詰めていて、相手DFのふところに潜り込むような形で打ったシュートだった。やはりゴール前でのポジショニングが抜群なのだろう。初戦でもゴールこそ決められなかったものの、ちゃんと2本シュートを打っていて──それもしっかりと枠を捉えている──、さすがだなあと思わされたものだった。その辺がゴール前でまったく仕事のできない日本のFWとは違う。羨ましいったらない。
 力の差は歴然なのだから、追いついてさえしまえば、逆転するのは時間の問題だった。逆転ゴールはそのわずか5分後。フェルナンド・トーレスが大きな身体を生かして、GKをかわすような右アウトサイドのシュートで2点目を決めて勝ち越し。さらにはロスタイムにPKまでもらって、終わってみれば3-1。途中まで負けていたのが嘘のような、スコア的には快勝の試合だった。
 あ、気がつけばこのスコアと展開って、日本代表のオーストラリア戦の負け方と一緒じゃん。ああ、またあの悔しさが胸によみがえる……。
(Jun 20, 2006)